住宅購入の費用・税金/確定申告・住宅ローン減税

「住宅ローン減税」2011年/補助金を受けた際の注意点

頻繁に制度の内容が変更されるため、複雑で分かりにくくなってしまった「住宅ローン減税」。2011年度の改正では、太陽光パネルなどを設置して補助金や交付金を受けた場合、その金額相当額を控除して税額を計算するよう改正されました。どうやら「二重受益」を回避しようという狙いのようです。お心当たりのある人は本コラムで、きちんと改正内容を確認しておいてください。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


イメージ写真

住宅ローン利用者の約9割が「住宅ローン減税」の恩恵を受けている

国交省の「平成22年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅を新築した人の69.1%、分譲住宅を購入した人の61.9%が住宅ローンを利用しており、そのうちの注文住宅では89.1%、分譲住宅では89.8%の人が「住宅ローン減税」の適用を受けていることが分かりました。住宅ローン利用者の約9割が減税の恩恵を受けている計算になります。

「住宅ローン減税」制度は、内需の柱である住宅投資を活性化しようと平成9年(1997年)から始まった租税特別措置です。時限立法による特別な税制措置であるため、本来であれば、いつ廃止されてもおかしくありません。しかし、住宅需要を喚起するインセンティブとして絶大な成果を残していることから、事あるごとに延長が繰り返されてきました。その刺激効果は計り知れないのです。

利用者にとっては大変ありがたい制度なのですが、ただ、適用条件や最大控除額が頻繁に見直されるため、複雑で分かりにくい仕組みになってしまった印象はぬぐい去れません。そのせいか、私ガイドのところには数々の問い合わせや相談が寄せられます。即答できない“難問”も多く、悪戦苦闘しながら対応しています。そこで、今回は皆様の参考にしていただけるよう、本コラムで役立ちそうな相談とその回答例を3つご紹介します。


質問その1  太陽光パネルの設置で「補助金」を受け取った場合の対応 

-----【質問内容】-----

はじめまして。現在、新築の建売り一戸建て住宅の購入を予定しており、その際、住宅ローン減税がどこまで適用されるか知りたく質問しました。

資金の内訳は、建売り住宅(土地と建物)の購入価格2000万円に、太陽光発電システムの追加工事分および諸費用の計380万円を加えた合計2380万円を全額ローン(自己資金ゼロ)で購入する予定です。すでに銀行からは融資承認をもらっており、住宅の引き渡しを受けた1カ月後にローンの借入金から費用を捻出し、太陽光発電システムを設置する予定です。

ここでお伺いしたいのは、「住宅ローン減税」と「補助金」の両方の恩恵を受けられるかどうかです。太陽光発電の設置に伴い、15万円の補助金(助成金)を受け取れるのですが、過日にネットで調べていたら「二重受益」になるため、「住宅ローン減税」か「補助金」のどちらか一方しか受けられないと書かれていました。来年(2012年)、確定申告をする予定ですが、急に不安を感じています。

不動産会社からは建売り住宅のみの金額(土地+建物代の2000万円)で申告をすれば大丈夫と言われたのですが、本当でしょうか。補助金を受け取ってしまうと、今度は住宅ローン減税の対象外(還付請求できない)になってしまわないか心配です。もし、どちらも受け取れるのであれば、その方法を教えていただけると助かります。大変申し訳ございませんが、よきアドバイスをお願い致します。

---【ガイドからの回答】---

まずは2011年度税制改正の内容を確認しておきましょう。住宅ローン減税に関し、本年度は以下のような改正がなされました。

「住宅を新築、購入あるいは増改築した際に補助金の交付を受けた場合、その住宅の取得等の額から補助金の額を控除して計算することとする」

一例として、建売りの一戸建てを購入し、補助金をもらったケースで考えてみましょう。

 ○建売り一戸建て住宅の購入価格:4000万円
 ○頭 金:100万円
 ○住宅ローンの借入額:3900万円
 ○住宅ローンの年末残高:3850万円(初年度)
 ○補助金:30万円

2011年度の改正により、住宅の取得価格から補助金の額を控除して計算することとなりました。その結果、実際に受け取れる住宅ローン減税の還付額の計算方法も変更となり、

 (A)住宅の取得価格-補助金
 (B)住宅ローンの年末残高

上記(A)(B)のうち、どちらか少ない金額が還付額を計算する際の基礎金額となります。モデルケースに当てはめると

 (a)購入価格4000万円-補助金30万円=3970万円
 (b)住宅ローンの年末残高3850万円

(a)>(b)となり、少ない金額の(b)3850万円が計算の基礎金額となります。以上から、このケースの場合、初年度の住宅ローン減税の還付額は38万5000円(3850万円×1%)となり、補助金30万円と合わせて最大68万5000円がもらえる計算になります。

これを、ご相談者のケースに当てはめると、

 ○建売り一戸建て住宅の購入価格:2000万円 (×2380万円)
 ○頭 金:ゼロ
 ○住宅ローンの借入額:2380万円
 ○住宅ローンの年末残高:2340万円(初年度の概算予測)
 ○補助金:15万円

 (c)購入価格2000万円-補助金15万円=1850万円
 (d)住宅ローンの年末残高2340万円

(c)<(d)となり、少ない金額の(c)1850万円が計算の基礎金額となります。以上より、初年度の住宅ローン減税の還付額は18万5000円(1850万円×1%)となり、補助金15万円と合わせて最大32万5000円がもらえることになります。

                     ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

ポイントは、建売り一戸建て住宅の購入価格を「本体のみの2000万円」と見るか、「パネル工事費用を含めた2380万円」と見るか ―― です。ご相談者のケースでは、建売り住宅の引き渡しを受けた後、“別工事”によって太陽光パネルを設置する予定になっています。建売り住宅は「売買契約」、パネル工事は「請負契約」というように、住宅の取得と太陽光発電パネルの設置を「同一」には見なすことができません。

そのため、住宅ローン減税の対象となる借入は「2000万円のみ」と判断され、たとえ2380万円が借りられても、全額(2380万円)は還付の計算対象となりません。ただ、その分、補助金は全額(15万円)を受け取れます。不動産屋さんのアドバイスどおりで間違いありません。

「二重受益」回避のため、ご質問のケースでは「住宅ローンの年末残高×1%」相当額が還付されない点、ご注意ください。


続いて、次ページでは2番目と3番目の質問にお答えします。




  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます