日本酒三昧
界 出雲の客室は、24室。全室に露天風呂が付いている。一階の客室に通されたが、これがなかなか広い。そして、玉造の湯が滔々と注がれている。そして、私の部屋の露天風呂には地元松江・国輝酒造の地酒五合瓶が置かれている。そう、吟醸逗留では、露天風呂に日本酒を注ぎ「酒風呂」を楽しめるのだ。もったいないから飲んでしまおうなんて思ってはいけない……。酒風呂を愉しむ前に、まずは、保湿効果が高く化粧水としても販売されている美肌の湯・玉造温泉を存分に味わおうと大浴場に出かけた。
そして、部屋に戻り、露天風呂にザバザバと日本酒を注ぎ、酒風呂をたしなむ。小道具として全室にフェイスパックが置いてある。これに温泉を垂らし、温泉パックも楽しんでほしいという計らいだ。ここまでされると、ここは「男一人で来る宿ではない」と思い始めた。が、たまにはいいではないか。美肌の湯に日本酒を注いだ酒風呂に浸かりつつ、温泉と日本酒のブレンド湯のフェイスパックをして、しばし寛ぐ。ああ、極楽、極楽……。
総支配人は利き酒師
しこたま酒風呂でふやけた後は、別棟のダイニングで夕食を。ほろよい加減の浴衣姿で、夕暮れの中庭を眺めながらテーブルについた。吟醸逗留の宿泊客には、当然のごとく日本酒であろうと、地酒リストを持ってきてくれたのは総支配人の酒井さん。お名前をうかがい、ただ者ではないと直感したとおり、利き酒師の資格を持つという。それならと、安心して、おすすめの酒を頼む。
11月になると松葉カニがどーんと提供されるが、地味ながら、この宿の名物となっているのが、宍道湖のシジミを使った「しじみのカタプラーナ」。シジミをポルトガル風に野菜や魚介とともに仕立てた塩味の鍋で、うまい。意外にも、日本酒に合う。酒を飲んでもシジミ効果で、ちょうどいいや、なんて。
しこたま飲んで、食べた後は、またまた温泉ざんまい。
界は、温泉旅館に「真刺激」を与えるというが、温泉も、酒も、食も、確かに中途半端がない。利用者の欲求にストレートに応えてくれた。次は、別の「界」を試しに出かけたい。
翌朝は、玉造がにぎわう、その事情をみつけに出る。