東日本大震災からまもなく8カ月。震災という未曽有の危機に、2008年のリーマンショック時の「派遣切り」の再発が危惧されました。はたして、派遣スタッフの雇用は震災後どうなったのでしょうか?今回はデータから実態をみていきます。

震災後、「派遣切り」は再発したか?

被災地では、企業の倒産や事業の継続が危ぶまれる事態が多発しました。そのため、派遣スタッフの中にも、雇用契約が中途解除になったり、自宅待機を余儀なくされた方が少なからずいました。ただし、リーマンショックと比較すると、その様相はずいぶん異なります。

リーマンショック直後の2008年10月からの2年間に、仕事を失った、もしくは失う見込みの派遣スタッフは15.1万人にもおよびました(厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況」)。この数字を単純に24カ月で割れば、1月あたり6000人以上がその状況に追い込まれたことに。同時期に仕事を失った、もしくは失う見込みの非正規労働者は28.8万人だったので、全体の52.4%を派遣スタッフがしめていました。

2011年3月の震災後の厚生労働省の同調査によれば、仕事を失った、もしくは失う見込みの派遣スタッフは、最も多かった3月で1004人、全体の22.0%、4月以降は1000人を下回り、全体にしめる割合も15%よりほぼ低くなっています。

派遣スタッフにとってみれば、一件でも雇用契約の不当な解除がある限り、問題はなくなっていないのと同じです。ただ俯瞰的にみれば、雇用危機という状況は同じにもかかわらず、仕事を失った、もしくは失う見込みの派遣スタッフは相当減っています。


東北で派遣スタッフが増えている

2011年1~6月に稼働している派遣スタッフ数のデータを、地域別にまとめました。

staff

クリックで拡大します。出所:日本人材派遣協会「労働者派遣事業統計調査の報告」


1~6月にかけて、被害が最も深刻な東北では派遣スタッフは減っていません。むしろ3月と6月を比べると、10369人から10550人にわずかですが増加しています。北関東・甲信でも、3月の9909人から6月の9240人と微減にとどまっている。全国的に、著しく派遣スタッフが減少したというよりは、横ばい傾向にあります。

実際、3月から6月にかけて稼働している派遣スタッフの変化率をみると、2009年や2010年もこの時期、派遣スタッフは減少しているため、派遣スタッフが減りやすい時期といえます(契約の切り替えや期末の繁忙期を過ぎるため)。しかし、2011年は全国平均で6.1%派遣スタッフが減っている中、東北は増加、南関東の減少率も全国平均より低い。北関東の減少率も全国平均とそれほど差がありません。

■3月から6月にかけての派遣スタッフ数の変化
rate

出所:日本人材派遣協会「労働者派遣事業統計調査の報告」より作成



震災後一時的に就業できないなどの状態はありましたが、被災地では、いまや復興・復旧のための臨時の人材ニーズ含めて派遣スタッフが活用されているといえるでしょう。

いくつかの派遣会社からも、震災直後は被災地で派遣スタッフの就業維持が困難になるのではと懸念していたが、人材ニーズが想定以上に続いており、業務内容によっては仕事不足よりも人材不足が深刻になりつつあると聞いています。

被災地よりも東海や中国・四国エリアの方が、減少率が高いのは、震災による間接的な影響だけでなく、「26業務適正化プラン」や派遣法改正のめどがたたないため、直接雇用の従業員に切り替える動きがあるからだと思われます。

なお、上記のデータは、日本人材派遣協会に加盟する派遣会社529事業所の数値なので、全員を網羅しているわけではない点はご留意ください。


雇用危機に派遣スタッフの雇用を守るためには?
 

リーマンショックや震災のような雇用危機は、いつ発生するかわかりません。

震災後、派遣スタッフの雇用契約の中途解除に一定の歯止めがかかった背景には、「派遣切り」再発を防止するために、政府や業界団体などが積極的に取り組んだことも一因です(例えば、雇用調整助成金の弾力運用や、派遣先企業への協力要請など)。

雇用危機のような非常時は、働く個人に不当に不利益が転嫁されることがないよう、今回のような抑止策を迅速に講じることが強く求められています。






※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。