食と健康/食と健康の基礎知識

辛味は味ではなく痛覚!辛さの感じ方・抑え方・辛い物を食べるコツ

【NR・サプリメントアドバイザーが解説】辛い食べ物が相変わらず人気です。実は辛さは、味覚ではなく痛覚で感じているのです。私たちは辛さをどのように感じているのか、辛さの抑え方・辛い物を食べるコツを含めて、ご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

辛味は痛覚! 実は味ではない辛味とは

辛さは味ではなく痛覚

辛さはやみつきになる味でしょうか? 実は辛さは、味蕾ではなく、痛覚で感じる感覚です

スパイスカレーや麻婆豆腐などで人気の辛い料理。実は、辛い料理の「辛味」は、味の分類の一つで刺激的な味を指しますが、実は「味覚」で感じるものではありません。

東洋医学では「辛味」は、五行説による甘味、塩味・苦味・酸味と合わせて「五味」の一つ。しかし生理学的には、苦味・酸味・甘味・塩味・旨味を「五基本味」といい、ここに「辛味」というものは含まれていないのです。

というのも、「五基本味」は、食品に含まれる味物質が味蕾細胞を刺激することで感知される、「味覚」で捉えます。もう一つ味わいには、感覚細胞も大きく関わり、食べ物が口の中に触れた感覚や、痛み、温度変化に反応します。「辛味」は、こうした「痛覚」や「温覚」で捉えられます。

例えばトウガラシを食べると、口の中には温度受容体が何種類かあり、そのうちのTRPV1という43℃以上の熱や酸の反応する分子が、トウガラシに含まれている辛味成分カプサイシンにも反応し、実際には体温は上がりませんが「熱い」と、また同時に「痛い」と感じます。

43℃以上と15℃以下の温度には、温度感覚の他にも「痛み」を感じるそうです。これは著しい高温・低温の状態では、生命を脅かす恐れがあるので、その危険を避けるための信号となります。

英語で辛いものを「ホット」というのは、経験的に「痛いほど熱い」と感じることから表現されたのでしょうが、こうした研究で同時に感知されることが明らかになってきました。

対称的なものとして、ミントを食べると、26℃以下の温度に反応するTRPM8という分子が、ミントに含まれるメントールという成分に反応して「冷たい」と感じます。

ワサビやカラシ、ニンニクなどは、これらに含まれるアリルイソチオシアネートなどのアリル化合物に、TRPA1という17℃以下の温度受容体が反応します。

こうした温度受容体は、口の中だけでなく全身の皮膚にも分布しています。伝統的な民間療法で、しもやけには靴下にトウガラシをいれるというのも、また夏向けの入浴剤にミント成分が使われているのも、こういう体の仕組みがあるから、ということが私も理解できました。このような温度受容体については、まだまだ解明されおらず、今後の研究が注目されています。
 

辛味の種類と辛味成分……ヒリヒリするホットな辛味・ツーンとするシャープのな辛味

一口に「辛味」と言っても、その辛味成分は、大きく2つのタイプがあります。

一つは「ホット」と表現し、トウガラシのように口の中で熱く感じさせるタイプ。いつまでもヒリヒリと持くのが特徴です。トウガラシのほか、コショウ・ショウガ・サンショウ・タデなどがこのタイプです。

もう一つは「シャープ」と表現されるワサビやカラシのように、清涼感をともない、鼻の奥でツーンと刺激するタイプです。ワサビやカラシ、ニンニク・ネギ・ダイコンなどがこのタイプです。
 

辛さを抑える方法は? 辛いものを食べやすくするコツ

カレーや麻婆豆腐は好きでも、辛味のレベルは人それぞれの好みがあります。食べてはみたもののあまりの辛さにびっくり!ということもありますよね。もし食事中に辛味を抑えたい時には、あなたはどうしますか?  よく水を飲んでもきかないとはよく耳にすることですね。

ワサビの効いたお寿司やマスタードを使った料理などの場合、シャープ系のスパイスは揮発性で辛味は長く続きませんから、お茶や水を飲んで洗い流すとよいそうです。

ホット系のスパイスは、水よりも油脂等でコーティングするのが効果的で、ヨーグルトや牛乳、アイスクリームがおすすめだそうです。
 

辛さは慣れる? 脳内のβエンドルフィンも関係

辛いもの好きの人は、どんどん「辛味」に慣れてエスカレートしていく傾向があります。痛みの感覚が続くと、脳内ではβエンドルフィンという鎮痛作用のある物質が分泌されます。βエンドルフィンは、「おいしさ」とか快感を感じる物質でもあります。この快感をまた得ようとしてエスカレートしていくそうです。(参考/『コクと旨味の秘密』)

トウガラシのカプサイシン、ショウガのショウガオール、ジンゲロール、山椒に含まれるサンショウオールなどの辛味成分には、実際の体温は上がっていないのですが43℃と反応するため熱を放散しようとし、また代謝に関わり体を温める働きがあると考えられています。他にも辛味成分には、食欲増進、消化促進などの作用があると考えられています。

こうした効果ははっきりと解明されたわけではなく、まだまだ研究が重ねられている段階ですし、感じ方には個人差もあります。しかし先人たちが経験をもとに食材を活用して熱さ寒さに対応してきた知恵が、科学的にも裏付けされるのは興味深いことです。

私たちも、こうした知恵を見習い、日々の健康のために活用してみましょう。とはいえ、辛いものは、食べ過ぎると胃壁を刺激しすぎることもありますから、習慣的な食べ過ぎには気をつけてください。何事もほどほど適量で、おいしくいただくことが基本です。

■関連リンク ■参考
  • 生姜抽出物のエネルギー代謝亢進に関する研究について (日本大学医学部衛生学・平柳准教授、永谷園 共同研究)
  • スパイスの"辛み"を探る(ハウス食品)
  • 温度を感じるしくみ(総合研究大学院 総研大ジャーナルno.10)
  • コクと旨味の秘密(新潮社)
  • 80のスパイス辞典
その他
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