バースデーソング
ガイド:5曲目の「バースデーソング」……これはよこたんが作曲。僕も生きていた訳ではありませんが、昭和初期の匂いがします。しかも、よこたん、8ヶ国語を操っているじゃないですか!
浜崎:
勿論精子卵子にもなっていない時代なので(笑)、我々の世代が作る昭和っぽさとかってイメージでしかないのですが、どうしても私が曲を作ると戦前っぽかったりワールドミュージック寄りのものになってしまうんですよね。いつの間にかこの曲限定で8ヶ国語を操る才女になってしまいました。バースデーというとおめでたいイメージですが、産まれて来た者に平等の、必ず訪れる死の影も感じてもらえたら。
松永:
当初は戦前の歌謡曲をテクノ風味で、みたいな話でよこたんに制作してもらっていましたが、気がついたら「蘇州夜曲」を歌い上げていたあの娘は日本を離れシベリア鉄道に乗ってしまった(笑)。革命直後のレニングラードにてゲンズブールの遠い親戚と恋に落ち(彼は帝政ロシア出身の両親を持つユダヤ系フランス人です)、チェブラーシカのような赤ちゃんを出産したと聞きます。そのバースデーを祝うために披露された楽曲でしたが、歌詞の縁起の悪さからスターリンの粛清によって楽譜は燃やされ、歴史の闇に葬り去られたという。しかしながら、今回よこたんに霊が宿りアーバンギャルドの曲として書き直させたそうですから、やっぱりよこたんってあなどれないね、なあんてね、テヘヘペロコツン。
ヴァガボンド・ヴァージン
ガイド:6曲目の「ヴァガボンド・ヴァージン」……新境地を感じます。よこたんの歌い方も妙に明るく……いや、こんな明るかったんだと。
浜崎:
ああ、アーバンってバンドだったんだと今回のレコーディングで再認識することが多かったです。以前から存在していた曲だったのですが、生ドラムの存在なしには成立しない曲だったので今回挑戦の意味合いも込めて収録しました。歌い方もこの曲に限らず今回のアルバムでは様々な事をチャレンジできてボーカリストとして嬉しかったです。一応、性格も根は明るいほうだと思っているんですけどね、趣味趣向がどうしても暗いので(笑)。
松永:
毎回毎回作りこんでいて「スタジオ」アルバムという表現がぴったりなアーバンギャルドのアルバムですが、この曲に関してはライヴでの演奏をかなりイメージしながらアレンジしました。フレネシ、響レイ奈、ないす(9【que】)、りむ(ペイ*デ*フェ)による前衛都市学園コーラス部の女子たちも、チアガールよろしくゆるふわ元気にコールを繰り出してくれています。