その訳は、よそもの力
深三の個性の源は、宿を切り盛りする若夫婦の発想力にある。深見家は先代からこの土地で宿を営んではいたが、夫婦は輪島で生まれ育った訳ではなく、父親に代わり戻ったIターン組だという。宿を始めた当初は近所のおじちゃんおばちゃんが自分の息子のように世話を焼いてくれたらしい。
二人は地元の大工さんと相談しながら蔵があった場所に宿を建てた。その蔵から出てきたのが先祖代々からから大切に使われてきた古い漆器だったという。
「漆器は蔵にあったものを大切に使っています。ご先祖さまに感謝しなくてはですね」。だから新たに購入したものはないという。
また、「調理人の修行をしてきた訳ではないので、僕の料理の先生は近所のおばちゃんです」という。ごく自然の流れで輪島でしか食べることができない個性的な郷土料理になったという訳だ。
食材の買出しに行けば仲の良い朝市のおばちゃんたちがサービスしてくれることも少なくないという。
深三は古漆器という材料を持ち合わせていたのだが、「輪島塗の宿」という他には真似できることのない「個性」に転換させたのは他でもない若夫婦の「よそもの力」だ。
地元で育ってきた訳ではないから全てが新鮮に見えた。そこで感じた驚きや面白さを料理やもてなしへ素直に表現した。
そうするとお客さんは喜んでくれた。この大切な「よそものマーケティング」を自然にやってのけている若夫婦。これが深三が魅力的であり続ける理由なのだろう。
さあ、ここまで聞いて、輪島に行かない手はない。
寒い時期ほど、魚が美味しい。いざ、輪島へ!
■能登半島輪島 民宿 深三
住所:石川県輪島市河井町4-4
TEL:0768-22-9933
地図:Yahoo!地図情報