フランス味もとても濃い、遊び心のあるクルマ
日本人デザイナーの手になる、日本メーカーからはいまどき絶対に出てきそうにない、コンパクトオープンカーがルノーから登場した。フランスのトヨタみたいなメーカーが、こうゆう遊び心のあるクルマを出すということは、そういうマーケットが彼らとその周辺にあるということなのだろう。ルノー・ジャポンの、徹底した“スーパーニッチ”戦略により、われわれ日本人もその“おこぼれ”に預かれるというわけだ。
ウィンドは、トゥインゴRSをベースに、ルノースポール・テクノロジーが企画開発を担当した、2シーターのオープンカーである。ミドシップスポーツカーのようなスタイリングと、オープンゆえファッショナブルさ、そしてRSゆずりの痛快な走り……、などなど、小さいながらも魅力満載、そしてフランス味もとても濃いモデル、だといえそう。
趣味のクルマだからといって、このクルマを無批判に受け入れるつもりなど毛頭ない(ホントはそれでいいと思っている、の意)。たとえば、スタイリングは全体としてユニークで目立って存在感もたっぷりだけれども、前からの眺めはお世辞にも格好いいとは言えないし、小さいがゆえのムリなまとめを感じる。反対に、斜め後からの眺めは、腰高であるにも関わらず、なかなかいい雰囲気だ。
インテリアだって、よくよく見てみれば、たいしたもんじゃないじゃない。“安い”クルマなのだから、妙な金の使い方をしていないのだ。それでも、仕立て方がうまいといおうか、演出上手というか、デザイナーの意志と眼だけは隅々まで行き届いているようで、とにかく見た目の雰囲気が、エクステリアのスポーティさととてもマッチしていて、飾りすぎずチープすぎず、軽快である。上手い。
左ハンドルしかない、という点に関しては、仕方ないという立場を取る。嫌なら買わなくていい、と言われると癪に触るし、少量だってクルマはクルマなのだから、とも思う一方、そう目くじら立てることもないよね、とも思う。なくても困らないクルマだから、とまでは言わないけれども、右ハンドル原理主義に奔る理由もまたそれほど強く持つものじゃない。
ルーフの開閉方法にも注目してほしい。ソフトトップでもなければ、流行りの格納式ハードトップの複雑系システムではなく、ミニ2シーターゆえの天板の小ささを利用した、180度ルーフハードパネル回転型収納だ。フェラーリの575スーパーアメリカによく似た機構で、ルーフ後辺を軸に天板が180度回転し、同時に開くリアパネル下に格納される。開閉にかかる時間はおよそ12秒である。