“変えない主義”は貴族趣味の極致

アストンマーティンヴィラージュ

今年3月のジュネーブショーに登場した2+2のクーペ&オープン。ボディサイズは全長4703mm×全幅1904mm×全高1282mm(クーペ)。価格はクーペが2299.5万円、ヴォランテと呼ばれるオープンモデルが2505万円。乗降時の利便性と下部の損傷を防ぐため斜め上(12度)に開くスワンウイングドアが備わる

いったいぜんたい、これまでのアストンとどこが違うのよ! なんて声が、聞こえてきそうである。ヴィラージュ。名前的には、バブル時代の末期あたりに登場して、驚愕のプライスタッグでその名を轟かせたモデルをマニアなら懐かしく思い出すところだが、カタチ的にはDB9とほとんど変わらないように見えるからだ。シロウト目には、確かにアストンマーティン、すべて同じである。

実際、このヴィラージュを駆って、少しは高級車民度の高そうな集まりに行ってみたが、「これ、ちょっとイジってあるね」などと訳知り顔で言う連中までいて、トホホであった。

ここまで姿勢を貫くとは、もう逆に大したものである。言ってみれば、貴族趣味の極致。ベントレーもロールスロイスも、昔から“さほど大きく変えない”ことを身上としてきた。何十年も続けた結果、落ちぶれてしまい、21世紀になってからのビッグチェンジで再び人気を取り戻したわけだけれども、DNAはそう易々とは変わらない。他のブリティッシュハイクラスと同様に、アストンマーティンもまた、しばらくは“変えない主義”ということか。

庶民からしてみれば、同じカタチばっかり作りやがって、と思うところだが、4年ごとのモデルチェンジで激変を期待するわれわれの感情と、100年単位で資産管理をする貴族社会とでは自ずとクルマの価値を判断する物差しが違うということなのだろう。

その日の気分でアストンを買ってみたら、思っていたクルマと違った、なんてことのないように、ひょっとしたらおいそれとは変えないのかも知れない。いずれにしても、常人には思いもよらぬ戦略があってのことで、ベントレーやアストンのニューモデルが変わり映えしないことを非難しているようじゃ、おそらく、買う資格もないって話には違いない。昔は、確かにそうだった。
フランクフルトショー

今年9月に開催されたフランクフルトショーのアストンマーティンブース。手前はトヨタiQをベースに内外装をアストンマーティンが手がけたシグネット

それにしても、アストンマーティンのラインアップは多くなってしまった。先日のフランクフルトショーを見て驚いたのだが、全部並べると、けっこう大きなブースになってしまう。それこそジャガーあたりより種類は多いんじゃないか。

まず2シーター系でやや小さめのボディサイズをもつ、V8ヴァンテージと同ロードスター、V8ヴァンテージSと同ロードスターS、V12ヴァンテージという5モデルがあって、そのうえに、12気筒で2+2のDB9がクーペとコンバーチブル(ヴォランテ)、さらに、今回のヴィラージュもクーペとコンバーチブルがあり、そして最高峰、2シーターV12のDBSにもクーペとオープンを設定している。そのほか、DB9をベースとした4ドアクーペ、ラピードも用意し、ウルトラスーパースポーツのone77もあるし、日本未導入ながらiQベースのミニカー/シグネットもありぃので……。ミッション違い、3ペダルと2ペダルの両方を用意するモデルもある、まで考慮すれば、同じようなカタチばかりにみえていて、いつの間にやら、とんでもなくバリエーション豊富になっていた。