田園調布に先だって宅地開発、
それに伴って商店街も発展

区境の標識

駅から東側は品川区、かつての線路の少し西側が目黒区との区境になっている

東京をある程度知っている人でなければ、東急目黒線西小山と言われてもぴんと来ないかもしれません。この街は、長いアーケードのある商店街、武蔵小山の隣にあり、駅の西側には品川区と目黒区の区境になっています。乗降客数も多く、お隣武蔵小山が2万4632人であるのに対し、西小山は2万1771人(東急電鉄2010年度 各駅の1日の平均乗降客数)で、かつ沿線全体では前年比で乗降客数が減少している駅も少なくない中で、利用者が増えている駅。知られていないけれど、実は住みやすい街というわけです。

 

小山八幡神社

本殿前に立って駅方面を見下ろす。高台に立地していることがよく分かる

街自体が開発されたのは大正11年。田園調布に先立ち、実業家渋沢栄一が設立した田園都市株式会社(現在の東急グループの前身)が開発したもので、駅から江戸見坂を上った小山八幡神社(神社自体があるのは荏原七丁目)のある高台一帯にあたる小山七丁目周辺(品川区)が住宅地として分譲されたのがきっかけです。この住宅地は隣接する旗の台六丁目(品川区)、洗足二丁目(目黒区)なども含め、洗足田園都市という名称で分譲されています。駅で言うと、東急目黒線の西小山、洗足と東急池上線旗の台をつないだ三角エリア内で、そのうちの高台ということになります。

 

当初、駅は設置される予定はなかったものの、この住宅地分譲で人口が増加、武蔵小山駅だけでは手狭になったため、急遽設置されたのだとか。目黒線は他の駅間も短い路線ですが、武蔵小山~西小山間はとりわけ短く、営業キロ数ではわずか700m。場所によっては2駅利用もまったく問題ない距離にあります。また、駅東側に中原街道、西側には少し離れますが目黒通りなど幹線道路も走っています。

 

●西小山周辺の位置関係概念図

概念図

西小山と周辺の幹線道路、東急の他線との位置関係を表わした概念図。距離、位置などは正確ではない


立会道路

元々は河川だったという立会道路。桜が植えられ、季節には賑わう

駅や立会道路周辺の商店街もここでの人口増を受け、発展してきました。現在の駅の両側には個人商店を中心にした商店街が並んでいます。立会道路は現在、桜の名所として知られていますが、元々は目黒区の碑文谷池、清水池を源とし、勝島運河に注ぐ立会川。昭和40年代に暗渠となるまでは両側に花街のある、艶っぽい場所でした。

 

目黒線の地下化、駅建替え、
そして商店街にも変化が

商店街

このエリアには百貨店と称して八百屋、肉屋、魚屋などが集まった集合店舗もあり、物価は安い

こうした発展の経緯から、西小山は駅、立会道路周辺に商店街、少し入ると細い路地、路地に沿って小規模な木造住宅が密集する街でした。特に駅の西側に当たる目黒区内の目黒本町5~6丁目、原町エリアは防災上の危険が指摘されてきました。東京都の地域危険度測定調査でも地震に対しての危険度が高いとされ、目黒区では木造住宅密集地域整備事業を行い、街を変えてきています。そうした変化が今、少しずつ目に見える形になってきました。

 

西小山駅

建替えられてきれいになった西小山駅。東急目黒線では地下化が進み、線路跡地が遊歩道などに生まれ変わっている

一番分かりやすいのは、2006年(平成18年)7月の東急目黒線地下化に伴って行われた西小山駅舎の建替え、駅前広場の整備でしょう。2008年(平成20年)~2009年(平成21年)にかけての駅周辺の変化は大きく、久しぶりに訪れると、かつての西小山が想像できないほど。

 

大宮公園の桜

商店街の中に設置された公園。規模は小さいながらも防災設備も備えている

また、該当エリア内にはここ10年ほどで規模は小さいながらも、防災備品置場や防災トイレ、貯水槽などを備えた公園が増えています。共同建替も含め、老朽化した木造住宅の建て替えも進んでいます。

 


高齢化が進む中、
新しい街作りへの動きも

開店休業

商店街の中には営業しているのかどうかが分からない店も

古い家が多いという点から推察できるように、このエリアでは高齢化も進んでいます。商店街には古い店も多く、また、客も高齢者が目につくのです。開店休業状態の店舗も少なくありません。

 

にこにこサロン

目黒区では初めての試み、にこにこサロン。ご近所のお年寄りが集っていた

しかし、高齢化に対処、新しい街作りの動きも起きてきています。ひとつは、目黒区が商店街内の店舗を利用して西小山ニコニコ通り商店街に設置したにこにこサロン。区民が気軽に立ち寄れる場ということで、お茶やコーヒーを飲んだり、トイレを利用したり、はたまた近隣住民のためのイベントが開かれたりという場。目黒区では初めての試みで、高齢者を中心に新しい形のご近所づきあいが広がることが期待されます。

 

そして、もうひとつ、私が注目しているのは、この街に住む人たちが手弁当で作り始めたフリーペーパー24580(ニシコヤマ)。2010年(平成22年)夏に創刊され、2011年(平成23年)春に2号目が出ており、この街の新旧、人、風景が住む人ならではの視点で紹介されています。歴史の深みのある街だけに、こうした動きでちょっと変われば、この街はもっと住みやすくなる、勝手にそんな期待を抱いています。

 

駅東側の商店街

駅東側の商店街。アーケードもあり、古そうな店も残る

次のページでは庶民的な商店街と高台のお屋敷街、2つの顔を持つ東急目黒線西小山の住宅事情を見ていきます。