値下げ交渉には、迅速な決断と対応が求められる
例えば、サラリーマン・オーナーさんや二代目のオーナーさんなど、新しい情報をキャッチしやすい環境にいる方の場合は、値下げ要求があった場合の決断が早く、即断で値下げに応じるケースが多いようです。しかし、昔の感覚を引きずったままのオーナーさんは、家賃を値下げすることに強い抵抗を感じる人がほとんどのようです。お話を聞いていると「値下げしたら負けだ」と思っているようにすら感じる時があります。
今の時代にそれではだめです。値下げは当たり前のことという感覚を持たなくてはなりません。
例えば今、連帯保証人もいて、入居審査を問題なく満たしている入居希望者が、「7万3千円の家賃のうち3千円を下げてもらえませんか」と言ってきたとします。月に3千円値引いたとすると、1年間では3万6千円、次の契約更新までの2年間で考えると7万2千円の収入減となります。これはほぼ、1ヶ月分の家賃に相当します。
しかし、ここで値下げを断るか、容認するかは、経済的なメリット・デメリットで考えるべきです。値下げを断り、次の入居者が見つかるまで2ヶ月、3ヶ月かかった場合を比べたときに、ここでは、値下げをしてでもすぐに契約したほうが得策だとわかります。
そうした合理的な判断基準を持ち、状況に応じて、すぐに値下げに応じる勇気が必要なのです。
他の入居者との平等性を気にして、「ここで値下げに応じると、今住んでいる入居者からも値下げを求められるのでは」などと心配するオーナーさんが多いものですが、ネットで公開している募集図面の段階で値段を下げているわけではないので、既存の入居者が新しい入居者の家賃について知る機会はほとんどありません。
値下げに応じる際に、「他の入居者には値下げの話はしない」という一筆をもらう、といった対処も可能ですから、それほど神経質になる必要はありません。
値下げ交渉に対する即応体制を整える
入居者の満足度を高めることにも関連しますが、入居希望者を逃さないためにも、不動産会社などからの要望にすばやく対応する必要があります。そのためにオーナーさんにとっては、不動産会社や、リフォーム会社とすばやく連絡のとれる携帯電話やスマートフォン、ファックス、メールやインターネットが見られるパソコン等は、必需品といえるでしょう。高齢のオーナーさんの中には、未だに携帯電話やスマートフォンも持っていない方が意外に多いのです。電話にしても、ファックス機能のない電話を使われている方がかなりいます。そうした状態だと不動産会社が連絡を取ろうとしたときに、その場でオーナーさんを掴まえることができません。
たとえば不動産会社が入居希望者を現地に案内し、「エアコンを新しい機種に替えてもらえたら、入居申込書を書きます」と言われたとします。これは不動産会社の社員では判断できない問題なので、オーナーさんに決めてもらわなくてはなりません。
けれどもそこですぐ連絡がつかなければ、「持ち帰ってご報告します」という対応にならざるを得ません。即答すべき話が即答できないと、入居希望者が他の物件に流れてしまう原因を作ってしまうのです。
「私は小さい機械が苦手で」「パソコンは嫌いだ」というオーナーさんもいますが、今や賃貸経営上必要なものなのですから、使いこなせるように努力をしなくてはなりません。入居申込書をファックスやメールで送ってもらい、オーナーさん自身の目で確認することも大切です。
入居申込書から読み取れる情報も対応の参考にする
中には管理会社任せにして、自分では入居申込書を見もしないオーナーさんもいますが、ここは他人任せにしてはいけない部分です。入居申込書の書き方一つをとっても、入居希望者の人柄がうかがえるものです。たとえば空欄が多かったり、字が殴り書きだったりする申込書は、書いた人がルーズな性格である可能性が高いのです。そうした人は家賃の支払いも遅れがちで、手間のかかる入居者となる場合があります。反対に、全ての欄を几帳面にびっしり埋めてある申込書は、書いた人が律儀で、部屋もきれいに使ってくれ、家賃もきちんと払ってくれる可能性が高いと予想できます。
そうした判断ができるということの他にも、入居者との間で何かトラブルが起こった場合、入居申込書をきちんと管理していれば、対応を考える際に参考にできるのです。