入居者が必ずといっていいほど要望してくる家賃の値下げ交渉
不動産の価格が上昇している状況の中で、昨今の賃貸経営を取り巻く環境は、少子高齢化や実質賃金の下落、旺盛な賃貸住宅の供給もあいまって厳しく、東京都内の人気エリアの既存賃貸マンションであっても、最新設備へのリニューアルなどをして、何とか賃料を維持できるという状況です。単身者向けの物件であれば、これまでガスコンロだったものをIHにするなどの工夫をしたり、家具付きにするなどの知恵を出しても家賃をダウンしなければならないというケースもいくつか出てきています。様々な空室対策を行っても満室にならないという場合、最後の手段はやはり家賃の値下げです。
先日も、多くの仲介会社の声を聞いてまいりました。毎年、2月、3月の繁忙期には10社以上からいつも繁忙期の動きをヒアリングしておりますが、その中で多くの仲介会社が口を揃えて指摘する、顕著な傾向があります。
それは、入居者側からの賃料値下げ要求です。近年では必ずと言っていいほど、入居の条件として値下げの要望をしてくるようになってきています。
今は賃貸に関しては買い手市場で、入居者側が多くの物件の中から選別する立場です。昔のように「今日決めてもらわないと、埋まってしまいますよ」という営業トークは通用しなくなっています。
逆に「そんなことを言って急かされるのなら、次の休みに別なところに見に行きます」と言われかねません。
礼金・敷金も減少傾向に
礼金・敷金の交渉もきびしくなっています。今では東京都内でも、普通の物件では礼金1ヶ月、敷金1ヶ月ぐらいが普通です。新築物件でも礼金2ヶ月なら条件の良い方です。駅から遠い・コンセプトがないなど、アピールポイントのない物件では、礼金ゼロも珍しくありません。東京都内城南方面や神奈川県の横浜など、礼金2ヶ月という強気の地域もまだまだ見受けられますが、首都圏以外では「礼金ゼロ」が普通になってきました。まさに、需要と供給のマーケットが二極化している現象と言って良いでしょう。
ネットには、値下げ交渉を勧める記事があふれている
かつて賃貸市場では、入居する側が、家賃・広さ・築年数・駅からの距離など、何かしら妥協をしなくてはならず、入居者の側が値切ってくることなど考えられませんでした。オーナーさん側でも「値下げを言ってくるような入居者はいりません」という反応が一般的でした。しかし、今は逆に、賃料や礼金など、オーナーさんが妥協しなくてはならない時代になってきています。
多くの人が物件探しなどで必ずといっていいほど活用しているネットにも、「値下げ交渉のポイント」などの記事が多くあります。そこには「ダメ元でよいから値下げ交渉をしよう」、「家賃交渉のテクニック」など、入居者側の意識を啓蒙するようなものが紹介されているのです。
つまり、値切るのも、値下げするのも当たり前なことになっているのです。そうした状況の変化に対応できる柔らかさを持ったオーナーさんでないと、生き残れない時代です。