Wiiに感じた、違和感
Wiiリモコンの分かりやすい新鮮な驚きは、普段ゲームをしないような人にまで広がっていきました。
しかし、そこにはある違和感があります。分かりやすさはともかく、本当にリアリティがあったのでしょうか。客観的には確かに、何をするにも小さな丸いボタンを押しているだけの姿よりは、ゲームのキャラクターと同じように実際に体を動かすゲームの方がリアリティがあるように見えます。しかし、多くの熟練したゲームユーザーの頭の中ではそうではないかもしれません。
例えて言えば、文字で読んでいた時は想像の世界で果てしなく膨らんでいたイマジネーションが、映像にしたら逆にしぼんでしまったような、そんな印象を覚えることがあります。誤解のないように、Wiiのゲームは面白く無いとか、ゲーマーは楽しめないとか、そういう話ではありません。しかし、Wiiリモコンを使うことで分かりやすくすることと引き換えに、何かが欠けることもあったように思います。少し、丁寧にお話していきましょう。
ボタンは、重たくなったり、軽くなったりする
ゲームが好きな人達というのは、ボタンを通して、本当に剣を振ったり、魔法を唱えたり、そういうイメージを持つことができるんです。
しかし、ゲームユーザーの頭の中では、そのただボタンを押すだけの行為が、驚くべき広がりを持っているのです。コントローラーについた小さなボタンは、プレイヤーキャラクターが巨大なハンマーを振り回す時にはグンと重くなり、小刀で連続攻撃をしかけるならばスッと軽くなります。本当に重たくなったり軽くなったりするわけはありませんが、しかし感覚的には確かに、重さが変わります。バズーカを撃てば反動を感じ、柔らかいものを殴れば手応えはなく、異議ありと叫べばボタンを押しているだけなのに右手の人差指で相手をビシィッと指差しているかのような気持ちにすらさせます。よくできたゲームというものは、お話が面白いとか、システムが凝っているとかいうだけではなく、ボタンを押した時に画面や音でどんな反応を表現するかによって、プレイヤーの想像力を刺激して、ゲームの世界にひきこんでくれるものです。
ただしこれには問題もありまして、このゲームの世界に引き込まれる感覚が分かる人にはいいんですが、ゲームを体験していない人には、その姿になんの魅力も感じないということなんです。ただ、ボタンをポチポチ押しているだけです。ここに、ゲームユーザーとそうでない人の断絶があり、その間を埋めるべく誕生したのがWiiでした。