都市化による無臭の時代は、体臭すら気になる!?
そこまで大昔のことではありませんが、現代のようなアスファルトではなく、地面が土と草木に覆われていた時代。衛生面の整備もまだ完璧とは言えない頃、生活環境は種々な匂いに満ちていました。その頃は、日本人もヒトの体臭に今ほど関心がなかったはずです。現代では、ゴミを溜めるにも衛生的な袋を使うようになり、溜めたゴミは強い悪臭を発する前に速やかに回収されていきます。一時問題になっていた排気ガスの臭いも、対策されたエンジンの開発により激減しました。このような大きな環境整備から、犬の散歩時のマナーの浸透など細かな習慣まで行き届いた結果、現在社会は悪臭とはほぼ無縁の暮らしが実現しています。
開発が進み、有機肥料はなくなり、下水から漏れる臭いも消え、海から離れれば磯の香りもなく、木々からのフィトンチッドもなく、花の香りもない今の都市は、「無臭化都市」とでも言えるかもしれません。多くの人にとって無臭の環境が当たり前になったことで、体臭などのそれまではあまり問題にされなかった「臭い」に嫌悪感を持つ文化が生まれたように思います。
そもそもヒトが不快に感じるニオイとは
夏のスーツ姿は汗臭い?
汗中には尿素があります。尿素が分解するとアンモニアが産生されます。皮膚には皮脂腺があるので分泌された脂肪を皮膚の細菌が分解すれば有機酸が産生されます。アンモニアと有機酸が同時にできると、汗を臭くて不快に感じる事になります。
気になる場合は「自己臭症」? 体臭を自覚できない理由
日本人のようなモンゴロイドの場合、体臭が強い人は少数派ですが、体臭自体は誰でもある程度持っています。人の体臭は、髪の毛を含む皮膚や、口臭、呼気などの臭いが混ざったもの。体臭は人それぞれですが、非喫煙者が喫煙者の体臭をタバコ臭く感じても、喫煙者自身は無自覚なことが多いように、自分自身の体臭を人が察知することは通常ありません。皮膚の臭いや口臭は、微生物が作っているものですが、自分の臭いを常に認識してしまうと、外界の臭いが正確に判別できなくなります。そのため、自分の臭いは本来わからないようになっているのです。
自分自身の体臭がひどく臭うと感じる場合や、対人関係があまりに気になる場合は、「自己臭症」などの精神的な病気の可能性もありますが、一人で悩まずにまずは皮膚科を受診してみましょう。
また、臭いの話と少し離れますが、ヒトは自分が出している電磁波(光)、音、化学物質についても、自覚することができません。ヒトは恒温動物なので、実は自身の内部から赤外線を出していますが、内部からの赤外線が見えない目なので外部からの赤外線も見えません。また、自分自身の心臓からの音や呼吸音は、解剖学的には常に耳に伝わっているのですが、無視するように脳が処理してまうため、聞こえなくなっています。化学物質からの臭いも音と同じように処理されています。夏場の靴下、ストッキングも脱いで身体から切り離されると臭いますが、中枢神経(脳)で処理しているので履いている間はあまり臭いません。臭いの場合は、自宅・自室の臭いも無視するように処理されています。
次ページでは、汗臭さを抑えるための効果的な臭い対策法をご紹介します。