建替えに際して目標にしたこと
日本で初めて“RC(鉄筋コンクリート)造の集合住宅”として、「同潤会青山アパートメント」が誕生したのは1927年のこと。完成後41年経った1968年の時点で、すでに建替えの取組みがはじまったという。以後、構想と断念を繰り返すが、阪神淡路大震災(1995年)を機にその機運は一気に高まり、2003年ついに解体された。築76年であった。新建物の設計を任された安藤忠雄氏は、ケヤキ並木と低層アパートが築いてきた景観を受け継ぐため、地下の最大活用を目標におく。2005年に竣工した「表参道ヒルズ」は地下6階地上6階建てのビルとなる。地上に見えるのは半分しかない。そしてもう一つの特徴が、おおきな吹き抜けに表参道と同勾配、同距離の坂道を建物内に収容したこと。「第二の表参道」が生まれた。
地下水に浮かぶ船のようなビル
ある講演会で安藤氏は、表参道ヒルズの敷地条件について「地下鉄がすぐ近くを走ることもあって、何十メートルも垂直に深く正確に掘らなければならなった。大林組には感心した」と当時を振り返った。奥行きが狭い敷地に巨大な吹き抜けの建物は、境界めいっぱいの施工をもとめたことがうかがえる。さらに驚くべきは、吹き抜けが建物の軽量化につながったことと、くわえてこのあたりは地下水圧の高いことから、ビルは土に浮かんでいる状態であるという。それをなんと182本の錨(永久アンカー)で支持層に固定しているのだそう。まるで船のようなビルである。