20年で大きく変わった派遣スタッフの初職
派遣と聞いてどんな働き方をイメージしますか? 派遣という働き方が認められた1987年当時、派遣は寿退社などで会社を辞めた女性が専門性をいかして再就業する働き方だといわれていました。その後、法的な規制緩和や多様な仕事観をもつ人が増えるに従って、派遣の裾野は拡大し現在にいたっています。
ところが、この20年で実態は大きく変わったといえそうです。
労働政策研究・研修機構が発表した「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣社員調査)」によれば、2009年以降に社会人になった派遣スタッフが初めてついた仕事の雇用形態は、派遣が50%を超えています。正社員を経て派遣スタッフになっている人は36.7%。1989年以前に社会人になって今も派遣スタッフを続けている人の初めての雇用形態は正社員が93.2%で派遣が0.7%だったのとは、ずいぶん異なります。
現在派遣で働く派遣スタッフの最初の雇用形態
出所:労働政策研究・研修機構「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣社員調査)」
背景には、女性の就業率の向上や非正規化の進展、ワークライフバランスを求める人の増加などいくつもの要因があるでしょう。
派遣スタッフには、派遣のまま働くことを希望する人も、正社員になることを希望する人もいます。一番大切なのは、どんな雇用形態かではなく、ご本人が望んだ働き方かどうかです。けれども、派遣でいたいのにそれが叶わない、正社員になりたいのに正社員になれないことがあるとするなら、派遣という制度をもっと改善させる必要があると思うのです。
以前、ガイドが行った調査では正社員経験のない派遣スタッフの正社員転換率は、正社員経験がある派遣スタッフの正社員転換率と大きな差がありました。この20年間、派遣スタッフの「初職(初めてついた雇用形態)」がこれだけ変わってきているのであれば、派遣として働く期間に身につけられるスキルや、派遣スタッフ時代に培った経験の評価の仕組みを変えていかなければならないと、この調査結果は問いかけているように思います。
現在、26業務適正化プランという形で派遣スタッフの仕事範囲は極めて厳密に制限されています。派遣スタッフからの困惑の声や、それによる派遣の雇止めリスクの懸念も少なくありません。
派遣スタッフとして働き続ける。いずれ正社員になる。どちらのキャリアを選ぶにしても、現行制度では不十分です。派遣スタッフが望む将来につながる働き方(制度)はどんなものなのか議論がなされていくようにと願います。
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