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誕生、starnet大阪(スターネットおおさか)(5ページ目)

カフェやアートの好きな人々に愛されてきた栃木県益子の名店スターネットが大阪・瓦屋町に誕生。きっかけは3月11日の大震災。築50年以上を経た趣ある問屋街のビルに、益子の緑と土の匂いを漂わせるストアとギャラリー、美しいカフェが開かれています。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド

豆腐クリームのさつまいもケーキ

スターネットらしい「豆腐クリームのさつまいもケーキ」(400円)とオーガニックブレンドコーヒー(400円)

スターネットらしい「豆腐クリームのさつまいもケーキ」(400円)とオーガニックブレンドコーヒー(400円)

この日のカフェのメニューは、お菓子4種類と飲みもの6種類。お菓子の顔ぶれは日替わりで、私は「豆腐クリームのさつまいもケーキ」とオーガニックコーヒーを楽しみました。少しずつ優しく溶けだしてくる素材そのものの舌ざわりを確かめているうちに、すんなりと身体に吸収されていくすこやかな風味。

「最近のスターネットのコーヒーショップにはバターたっぷりのお菓子も登場していましたが、大阪ではあえて、かつてのスターネットのイメージでつくっています。たとえばお母さんが子どもにつくる昔ながらのおやつのような」

ちなみに豆腐クリームに用いるお豆腐は、歴史と独特の風情をもつ空堀商店街に並んでいる昔ながらのお豆腐屋さんで調達しているそう。

土のつながり、人のつながり

スターネット「山の食堂」で使われていた家具。

スターネット「山の食堂」で使われていた家具。

カフェの明るい窓のむこうには、瓦屋町の裏通りの音が飛び交っています。心斎橋=新しい繁華街と、谷町=昭和のたたずまいをとどめる寺町との境界に横たわる町。

江戸時代には、この瓦屋町の人々は土を掘り、瓦を焼いていたのだそうです。時を越え、距離を超えて、益子と瓦屋町をはるかに結ぶ「土と手しごと」の縁。

はったさんは開店準備開始当初の不安をこう話してくれました。
「関西では益子という土地など知名度がないと思っていたし、私たちのほうも益子の山のなかにいましたから、情報にはうとかったんですよ」
ガラス窓を開ければ、電線と古くから続いてきた町並み。

ガラス窓を開ければ、電線と古くから続いてきた町並み。

しかし、スターネットが益子で丹念に育んできたもの――アーティストたち、食に関わる人々、お客さまとのあたたかなつながり――その星の網はあらかじめ大阪にも見えない小さな星座を紡いでいたようです。

「西には私たちと想いを共有し、いっしょになにかをつくっていける仲間がすでにいてくれたんですね。開店までにたくさんの人々からご協力をいただいて、本当にありがたいと思いました。私たちは決してまったく知らない、言葉の通じない人々のあいだに入っていったのではなかったのです」
カフェの大きな古い薬箪笥は、馬場さんの事務所で使われていたもの。

カフェの大きな古い薬箪笥は、馬場さんの事務所で使われていたもの。

そう、開店間もないこの日も、まだ告知もままならないのに、たくさんの人々が期待と小さな興奮を表情にそっとにじませて「あのスターネット」に足を踏み入れ、星々の瞬きを含んだ益子の空気を吸いこんでいたのです。

▼スターネット大阪のメニューとショップデータはこちら
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