うつ病/冬季うつ病・五月病・気分変調症・その他のうつ状態

ストレス太りの予防・解消法……新生活や激務で体重増加?

【医師が解説】生活環境が変わり、体重が増えることはよくある事です。新しい環境でのストレスは過食を招く一因です。今回は、心の健康に関連する話題として、そうしたストレス太りの原因となる、過剰な食欲を抑えるためのポイントを詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

新生活のストレスが原因で体重増加? 太る前に知っておきたいこと

ストレス太りの予防と対策法、新生活と激務のストレスによる心のケア

ストレス太りへの効果的な対策は? それには心の健康が重要です

学校や職場などで4月から新生活を始められた人は少なくないはず。あわただしい4月が過ぎ、ゴールデンウィークも終わり、新緑が輝く季節になると、程度の差はあれど、だるさや倦怠感などのいわゆる「五月病」の症状を感じる方が増えます。

そしてこの時期に、いつの間にか体重が増えてしまったことに悩む人もいます。実は体重増加は新生活にありがちな問題の一つなのです。その原因は「食べ過ぎ」と「運動不足」によるものですが、これらには当人の心の健康状態がかなり関わっていることがあります。

今回は心の健康に関するトピックとして、新生活のストレス時に、いかに適正体重をキープしていくか、そのポイントを詳しく解説します。
 

ストレスで食欲が増す? 甘いものの効果と誘惑

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ストレスは甘い物をつい食べ過ぎてしまう、ありがちな原因です

程度の差はありますが、新生活は誰にとってもかなりのストレスです。特に少し前まで学生だった新社会人にとっては、大きな生活の変化を感じるでしょう。学生時代は午前に講義がない日はお昼近くまで寝ていたような人にとっては、毎日の規則正しく就業するだけでもかなり大変かもしれません。

そうした新しい毎日はそれだけでも心身にこたえます。その上、会社では覚えねばならぬことが山積みでしょう。とはいえ、そうした新社会人になったストレスの影響には、かなり個人差が出ます。

ある人にとっては、既に何でもない毎日になっているかもしれません。でも、全然そうでない人もかなりいるはず。そして、そうしたきつい毎日に、甘いものをつい口に入れる習慣が出来やすいのです。

実際、甘いものは脳内に、そのエネルギー源となるブドウ糖に姿を変えて入っていき、脳の働きをよりシャープにします。同時に脳内には快楽物質ともいえるエンドルフィンの分泌が促進されて、それまでの疲れがかなり取れるかもしれません。こうしたことは大変良い話に聞こえそうですが、しっかり注意したい落とし穴があります。それは、人は快楽に大変弱いのです。特にストレスで毎日がつらい時には、甘いものがもたらす快楽の誘惑に抵抗するのが、かなり難しいかもしれません。そうした時が、つい食べすぎやすい時なのです。
 

過食症? うつ病? 体重増加時に注意したい心の病気

もっとも、体重が増えたことを一概に悪いことと決め付けるのは問題です。例えば、学生時代に美容に力を入れすぎて、体脂肪率が一桁をキープしていたような状態が果たして、その人の健康的な状態なのかどうかには、疑問点もあります。

ただ、ここでしっかり言っておきたいことは、体重が急に大きく変化した場合、自分で自覚している以上に心の健康に問題が起きている可能性があります。例えば、もしも食べ過ぎた後に、後悔が強く、食べたものを吐き戻すような事があれば、過食症の可能性もあります。また、もしも、甘いものへの欲求が、冴えない気持ちを晴らすための欲求ならば、うつ病の可能性もあります。

こうした心の病気の可能性を注意したい状況は、簡潔に言えば、自分の毎日が、それまでの毎日と比べて、かなりレベルダウンしている時です。心の病気は総じて、必要な治療を早くスタートすればするほど、より良好な経過が期待できますので、もしもそうした状況ならば、精神科受診もどうか考慮してみてください。
 

健康的なダイエットの第1歩に大切な「睡眠」と「食事」

新生活が始まれば、その忙しさで充分な睡眠時間をなかなか確保し難いかもしれません。その短い睡眠時間は体重増加の原因にもなります。例えば、起きている時間が長くなれば、そねに応じて食べ物を口に入れる回数も増す…といったこともあります。

また、食事の量自体は適正範囲のようでも、そうしたストレスが強い毎日になると、栄養のバランスにしっかり注意が回らない可能性もあります。例えば、もしもビタミンやミネラル類が不足すれば、それだけでストレスへの抵抗力がかなり弱わる可能性もあります。毎日のお食事には、季節の野菜や果物などもなるべく用意したいものです。ただ、もしも、「その果物は大嫌い!」といった、好き嫌いがはっきりしている人は、サプリメントでビタミン類を補給することが近道かもしれません。

また、少し細かい知識として、アジやサバなど、いわゆる青魚に含まれるDHAなどの成分に、抗うつ効果があることは、覚えておいても損は無いでしょう。実際、そうした青魚の摂取が多いアイスランドでは、その地理的位置がほぼ北極圏で、冬の盛りには日照時間がほんの数時間になるにも関わらず、冬季うつ病の発症率がかなり低くなっています。とはいえ、そうした青魚にアレルギーがある方もいらっしゃいますが、そうでなければ、食事のラインナップに加える価値は充分あると思います。

もっとも、近年は環境問題もあり、食物連鎖を通じて水銀などが体内に蓄積するような可能性も問題視されています。その意味するところは。食物連鎖の上位に位置するマグロのような大型の魚を毎日食べる、あるいは、大型の魚でなくても、同じ海域で獲れた魚だけを食べる…といったことはなるべく避けるのが、より安全です。
 

ストレスによる過食を防ぐポイント

最後に、ストレスによる無用な、あるいは不快な体重増加を防ぐための、ここまでの話のポイントをまとめます。
  • まずは、充分な睡眠時間を確保する
  • 食事には、量だけでなく栄養のバランスにも気を配る……その際、青魚に抗うつ効果があることはご存知ですか?場合によってはビタミン類のサプリメントも考慮してみて下さい
  • スケジュールをぎっしり埋め尽くせば、5月病を招きやすくなります
  • 家族や友人と過ごす時間は効果的なストレス対策の1つです
  • 定期的に有酸素運動をしていますか?……軽く汗を流せる運動はストレス解消の基本です
  • ストレスがうつ病など、心の病気のきっかけになることにはご注意を。ちなみに、一生のどこかで、うつ病を発症する確率は、10人のうち、少なくとも1人以上にあります。

では、皆さま、いよいよコロナのワクチン接種も始まり、その出口に段々近づいてきたとはいえ、まだまだ厳しい、この毎日のストレスをしっかり乗り切っていくために、今回のこうした話も是非参考にしてみて下さい。

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