オペレーションズリサーチを数学的に分解してみる
オペレーションズリサーチを数学的にいえば、「さまざまな制約条件を満たしながら、ある数式(目的関数といいます)を最大化、または最小化する」というもの。企業において制約条件とは、現在おかれている環境のこと。「好きなだけお金が使えない。現有トラックが3台しかない」ということも、制約条件になります。実際の経営で、無限にお金を利用していいということはないように、制約条件がないことはありえません。では、具体的な例でみていきます。制約条件が
- トラックが3台しかない
- トラックAは大阪に今いて、トラックBは東京、トラックCは福岡にいる
- トラックAは燃費が15KMで60リッターガソリンが入る。トラックBとCは燃費が20KMで50リッターガソリンが入る
- 沖縄と北海道を除いた全ての県庁所在地に荷物を送る
などとしましょう。これらを満たしながら、目的関数「輸送コストの最小化」問題を数式に表して解いていくのです。欲しい答えは、制約条件を満たし、目的関数を最小化、つまりは最も輸送コストの低いトラックの経路です。
こうした問題を解く際はコンピューターが必要ですが、一度定式化を覚えると簡単な入力だけでトラックが進むべき経路と総コストがでてきます。
経営者が決定するのは、上記の目的関数をどのようなものにするか、制約条件を緩めるために追加投資をするかなどです。例えば、目的関数に「コスト最小化」を置くのか、「時間の最小化」を置くのかは大きな経営課題です。上記のようにコストを最小化させたものの、トラックで県庁所在地にモノを送るのに時間がかかりすぎてしまい、お客様からクレームの嵐になるかもしれません。一方で、もし輸送時間の最小化をおくと、コストが高くつきすぎて経営を圧迫する可能性もあるのです。
制約条件に関しては、現状のトラック3台を4台にするといったように、トラックを新たに買うのか買わないのかといった重要な経営課題につながることになります。
経営者は、こうした経営課題をどのように数学的に解決するかを理解するために、ビジネススクールでオペレーションズリサーチの勉強する必要があるのです。もしこの技術を知らずに、「トラックを1台増やしたい」といったチーム員の説明を聞くだけでは、経営の意志決定過程が事後説明のできない、ブラックボックスになってしまいます。このように経営課題を可視化しながら考えるために必要な学問でもあるので、「意思決定論」といわれる場合もあります。
数学的思考が苦手な人にはタフな授業
非常に役立つ学問ですが、ビジネススクールの必修科目なので文系出身の学生が最も苦労するのは、このオペレーションズリサーチといわれています。上記の数学的説明は簡単化していますが、実際はもう少し高度な数学的思考法が必要です。そのため、高校時代に数学が嫌いで文系に進み、会社でも営業職にいた人が、オペレーションズリサーチの授業についていくためには十分な予習と復習が必要でしょう。また、ビジネススクールの友人の理系出身学生の助けを借りることも有効となります。ガイドはオペレーションズリサーチは最も好きな学問でしたが、一部の学生は非常に嫌いだと後々も言っています。ただ経営者に必要な学問であることは間違いないため、苦手な人も最低限の知識をつけることが経営判断力を育成するために必要であると割りきって勉強して下さい。
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社団法人 日本オペレーションズリサーチ学会