ジェネリック医薬品の普及を妨げてきた医師の不安
日本でジェネリック医薬品の普及が進んでこなかった主な理由としては、実際に患者の治療に当たる医師が感じている3つの不安が挙げられます。1つめは、ジェネリック医薬品自体の信頼性(品質や効果)に対する不安。2つめは、MRによる情報提供の少なさや副作用に関する情報蓄積の少なさに対する不安。そして3つめが、医薬品の安定供給に対する不安です。過去に価格競争で採算の合わなくなった製品の製造をやめてしまうメーカーが存在したことが、安定供給への不安を助長してきました。
政府は、ジェネリック医薬品を普及させるために処方箋の様式を変えて保険薬局の判断でジェネリック医薬品に切り替えやすくしたり、ジェネリック医薬品に切り替えることで保険薬局の収入にメリット与えるなどして普及に努めてきました。しかし医師の不安は根強く、なかなか思うようには普及してきませんでした。
大手新薬メーカーによるジェネリック医薬品事業への本格的進出
ジェネリック医薬品の普及が大きく進む可能性が出てきたのが、大手新薬メーカーによるジェネリック医薬品事業への本格的な進出です。これまで日本では、ジェネリック医薬品は主に専業メーカーが製造・販売してきました。その数は300社を超えてはいるものの中小メーカーが多く、それも医師の不安を払拭できない要因になっていたといえます。
そうしたなかで、日本のジェネリック医薬品市場の拡大可能性に注目した欧米大手製薬企業が、日本でジェネリック医薬品に積極的に取り組み始めました。そして、国内の大手新薬メーカーもジェネリック医薬品事業に本格的に動き出しました。
内外の大手新薬メーカーに対しては、製品の品質、情報提供、安定供給のいずれにおいても医師の信頼を得られる可能性は十分あるため、日本でもジェネリック医薬品が欧米並みに普及する可能性が出てきたといえます。また、こうした動きは従来の「新薬メーカー」と「ジェネリック医薬品メーカー」という業界の壁を取り払うことにもつながり、その意味で製薬業界の構造を大きく変えるものであるといえます。
■大手新薬メーカーによる日本のジェネリック医薬品市場進出の動き
- 世界最大の製薬企業であるファイザーが日本でジェネリック医薬品や長期収載品を扱うエスタブリッシュ事業部門を新設
- サノフィアベンティス(売上高世界第2位)が日本におけるジェネリック医薬品シェア1位の日医工との合弁会社「日医工サノフィアベンティス株式会社」を設立
- 第一三共が日本のジェネリック医薬品市場に参入するため「第一三共エスファ株式会社」を設立
- ジェネリック医薬品では、世界市場でシェアトップのテバファーマスーティカル・インダストリーズが興和株式会社と合弁で「興和テバ株式会社」を設立