シングル中年を満足させるハイグレード賃貸
追い風の第二は、皮肉にも持ち家需要の足を引っ張っている「未婚率の上昇」つまり晩婚化・生涯未婚化である。現在の賃貸入居者の世帯主年齢は30~34歳が12.2%ともっとも多く、39歳未満で区切ると43.3%(平成20年住宅・土地統計調査)。つまりこの年齢層が賃貸住宅市場を支えており、現在の未婚傾向が続けば、このボリューム世代が今後も結婚しないで賃貸に住み続けていくと考えられる。40・50代のリッチ・シングルを満足させる賃貸とは?
某大手ハウスメーカーの賃貸事業関係者は、これからの賃貸のキーワードについて、「東京」「ハイグレード」を挙げる。「かつて、アパートのメイン需要層だった学生や20代だった時代には1室18~20平方メートル程度のハーモニカ(外階段)タイプでも許されました。しかし今は、当社の入居メイン層は30~40代サラリーマン・OLで、ちゃんとした勤務先であれば会社の補助も受けられることもあって、賃貸で妥協したくない、という層。周辺相場家賃より2~3割高めでも自分で納得するグレードを選びます」
「もはや東京でしか賃貸は競争できない」という声も
小規模宅地特例でも賃貸は優遇
追い風の第3は、2010年4月から適用されている小規模宅地の特例改正。これまでは、土地を相続した場合240平方メートルを上限に相続税の評価額が80%減額され、200平方メートル以下であっても50%減という優遇措置があった。これが賃貸を経営していると200平方メートルを上限に50%減という優遇措置もあった。賃貸には小規模宅地特例でも有利な点が。
こう考えると、過剰供給で空室率が高まっている厳しい環境にあっても、住宅各社が賃貸で差別化戦略を強めていくことは容易に想像できるし、事実強めている。次回以降は、なかでも賃貸差別化戦略の注目企業・事例を取材レポートしていきたい。