ハウスメーカー・工務店/ハウスメーカー最新トレンド

新・賃貸時代(1)なぜ改めて注目されるのか(2ページ目)

東日本大震災で持ち家神話に陰りが出そうな中で、住宅各社がさらに訴求してきそうなのが「賃貸」分野である。しかも人口に比例する形で「東京一極集中化」が加速。そうした中で、大手ハウスメーカーが手がける低層賃貸住宅が、かつての“低層アパート” のイメージとは今は昔、目を見張るほどラグジュアリー化している。その進化を遂げた低層賃貸の例と各社の戦略をシリーズでご紹介。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド


シングル中年を満足させるハイグレード賃貸

追い風の第二は、皮肉にも持ち家需要の足を引っ張っている「未婚率の上昇」つまり晩婚化・生涯未婚化である。現在の賃貸入居者の世帯主年齢は30~34歳が12.2%ともっとも多く、39歳未満で区切ると43.3%(平成20年住宅・土地統計調査)。つまりこの年齢層が賃貸住宅市場を支えており、現在の未婚傾向が続けば、このボリューム世代が今後も結婚しないで賃貸に住み続けていくと考えられる。

カップル

40・50代のリッチ・シングルを満足させる賃貸とは?

30代の彼らが5年後、10年後経てばどうなるか。40代・50代で仕事を持ちながら裕福なシングルライフを送っているだろう。バブル時代の独身貴族とまでは行かなくても、子供の教育費に足をとられているファミリー層よりも可処分所得は高い。当然、賃貸の設備やグレードにもこだわる。最新のエコ設備に投資する余裕もあるだろう。結果、ハイスペックでグレードも広さもあり、できればエコにも貢献するような「プチ・ラグジュアリー賃貸」の需要が想像できる。スマートハウスや蓄電池、EV、HEMSなども響きやすいターゲットだ。

某大手ハウスメーカーの賃貸事業関係者は、これからの賃貸のキーワードについて、「東京」「ハイグレード」を挙げる。「かつて、アパートのメイン需要層だった学生や20代だった時代には1室18~20平方メートル程度のハーモニカ(外階段)タイプでも許されました。しかし今は、当社の入居メイン層は30~40代サラリーマン・OLで、ちゃんとした勤務先であれば会社の補助も受けられることもあって、賃貸で妥協したくない、という層。周辺相場家賃より2~3割高めでも自分で納得するグレードを選びます」

東京

「もはや東京でしか賃貸は競争できない」という声も

こうした入居者層は当然ながらよりよい仕事を求めて都会・東京に集中する。その入居者を納得させうる億単位のアパートを建てられるオーナー層も都市に集中する。「もはや東京でしか賃貸は売れない」という業界用語もあるほどだ。広さも設備も仕様もハイグレード化すれば、建築費も単価アップし、家賃も上ブレしオーナーも喜ぶ。この好循環を狙うべく、大手ハウスメーカーの低層賃貸商品は、今や分譲マンション並みにハイグレード化しているといえる。

小規模宅地特例でも賃貸は優遇

追い風の第3は、2010年4月から適用されている小規模宅地の特例改正。これまでは、土地を相続した場合240平方メートルを上限に相続税の評価額が80%減額され、200平方メートル以下であっても50%減という優遇措置があった。これが賃貸を経営していると200平方メートルを上限に50%減という優遇措置もあった。

ニュータウン

賃貸には小規模宅地特例でも有利な点が。

しかし、改正後は相続人が「配偶者」「持ち家を所有していない別居の親」「同居または生計を一緒にしている親族」の3要件を満たさないと、土地の相続税評価額がすべて課税対象になる。そういう中で、賃貸経営している場合は引き続き50%減が適用されるというのだ。つまり、この特例改正でも、相続対策として積極的に賃貸経営しようという人が増えるのではないかという見方が強まっている。

こう考えると、過剰供給で空室率が高まっている厳しい環境にあっても、住宅各社が賃貸で差別化戦略を強めていくことは容易に想像できるし、事実強めている。次回以降は、なかでも賃貸差別化戦略の注目企業・事例を取材レポートしていきたい。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます