昨年の生殖医学会企業ブースで試飲して印象に残ったサプリメント飲料がありました。『エンゼルストーク』という葉酸とアルギニンの飲料です。このサプリメントを開発したのは、浜松医科大学の産婦人科教授・金山先生。なぜ医科大学がサプリメントを開発したのかに興味を持ち、金山教授に取材させていただきました。今回はそのインタビューについてご紹介をさせて頂きます。

サプリメントを開発したきっかけ

―サプリメントを開発したきっかけを教えてください。

教授

金山教授です

浜松医大の産婦人科では、以前よりアルギニンについての研究を進めていました。私の前の教授の時からですから、かなり前からです。アルギニンはアミノ酸の一種で男性の場合、精子形成に関わっており、女性では子宮の血流や着床に関わる物質です。アルギニンの摂取は医学的に意味のあることなのですが、残念ながらとても苦いというのが問題で色々と試行錯誤しました。

サプリメントとしてウエハースやクッキーに入れて商品化を図ろうとしました。サプリメントとして可能なアルギニン量は1gまでですが、苦みが強い成分なので、連続的に1gのアルギニンを摂取することは難しく、一時は暗礁に乗り上げた状態で、研究がしばらくストップしておりました。

私の代になって、もう一度アルギニンをなんとかできないものか、苦みを消す成分の検索を始めたのです。アルギニンは塩基性なので酸性のビタミンを添加することにより中和され、苦みが消えるのではないかと仮説を立てました。

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アルギニンは非常に苦いため、そのまま飲むとこうなります

そこで見つけたのが葉酸です。皆さんもご存じの通り、葉酸は厚生労働省が妊娠を考えている女性に推奨しているビタミンです。偶然の産物ですが、女性に必須のものが合わさって、味もアルギニンの苦さを中和したことにより、商品としての価値がぐんと上がりました。

そして、毎日飲んで頂けるように味を調整し、クエン酸と香料を加えることにより、爽やかで飲みやすい飲料に仕上げました。

研究室でアルギニンに着目した理由

― なぜ研究室ではアルギニンに着目したのですか?

浜松医大ではずっと妊娠中の血管の収縮についての研究を進めてきました。妊娠中にアルギニンが減少すると血管が収縮します。我々の研究室でもアルギニンは妊娠中の血流亢進に重要なアミノ酸であることがわかりました。また排卵直前は血流が上昇します。これもアルギニンが関与します。これらのことからアルギニンに注目して研究を進めてきたのです。

サプリメントの対象者

― どんな方に飲んで頂くイメージを持っておられますか?

子供を望まれているカップル、妊娠中の方、特に高齢妊娠の方や妊娠高血圧症候群のリスクがある方の栄養補助として開発しました。

不妊における体質改善外来

― 金山教授は不妊における体質改善外来をされているとのこと、詳しく教えて下さい。

現在、不妊治療をされている方もそうですし、まだそういうことに意識はないけど将来的に子どもが欲しいと言われている方の生活習慣を調べて行くと様々な問題があることに気づきます。

不妊症の方の中に食事のバランスは悪い、カラダの冷えの問題、運動不足やストレスの増大などを持っている方が多いのです。漢方で言う未病の状態の人が多いとも言えます。未病とは病気にはなっていないけど、その手前の状態ということです。それから、最近気になるのはアレルギー体質の人が多いと言う事ですね。

アレルギー体質の方に夫の精子が異種抗原になってしまうことも経験します。それを1つずつ解消していくことが妊娠しやすいカラダづくりになるのです。今回のサプリメントの開発もそのような方の食生活(栄養状態)の改善をサポートする目的で作成しました。

セックスレスについての考え

― 最近、問題になっているセックスレスについても教えて頂けますか?

そうですね、セックスレスはかなり重大な少子化の原因だと思います。その背景に悪い生活から来る性欲低下があると思います。日々の生活習慣が大事になってくるのです。

今後検討している研究・製品

― 今後も新しい製品をお考えなのでしょうか?

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アルギニンの構造です

今、注目しているのは着床環境をさらに良くするためのサプリメント開発ができないものかということです。検討すべき点がたくさんありますが、ロイヤルゼリーなどを候補に考えています。

それから、不妊予備軍を出来るだけ早い段階からピックアップし、不妊原因を減らす生活をしてもらうような簡易検査を開発したいと思っています。検査の敷居を低くして、多くの結婚前の方に利用していただくことができないものかも検討していることの一つです。

日本人は産婦人科疾患への意識が低い?

― 最後に何か一言あればお願い致します。

日本では高度な産婦人科医療が受けられますが、一般の方の産婦人科の知識は十分ではないように思います。たとえば43歳を過ぎると妊娠する確率は低くなりますがあまり一般の方に知られていません。

浜松では多くの若いブラジルの方々が子宮頚がんの検査をきちんと受けに来ます。日本人はそれほど多くありません。日本では産婦人科の疾患についての学校教育がほとんどされていないような気がします。重要な課題と思います。

私は自分自身を産婦人科のジェネラリストと思っています。不妊治療から出産、婦人科腫瘍、更年期広範囲に研究し学んできました。産婦人科の分野を幅広く見たことが様々な研究や開発を推進したと思います。

今後も積極的に新しい製品、新しい治療、検査について開発し、また産婦人科の知識を一般の方に啓蒙をしていきたいと思っております。企業とのコラボレーションも大歓迎ですので、産婦人科分野に関して何かご提案ご提案があれば私の方までご連絡下さい。

取材を終えての感想

つい数年前まではサプリメントというと怪しげなイメージが先行していましたが、最近では製薬企業も本格的に研究や製造に乗り出しています。今回は医科大学が主導して製品を開発されていることから、サプリメントが健康管理の1つのソリューションとしての地位を確立してきたのだなと感じました。

栄養素をきちんとサプリメントで摂取することが大事だということが、学術的にも認められたということですね。

今回の取材で驚いたのは金山教授の頭の柔軟性です。教授というと堅いイメージがつきものですが、まったくそういうところもなく気さくな感じでお話を頂きました。この場をお借りして、貴重なお時間を頂いた事に感謝申し上げます。

■参考
エンゼルストークの紹介⇒エンゼルショップ(株式会社A-LIFE)
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