「支給停止基準額」が2年連続で変更
年金カットの対象は、厚生年金に限られる。従って、国民年金(老齢基礎年金)は調整の対象外となる
具体的には、「支給停止基準額の変更」です。この変更は昨年に続き2年連続となります。この変更が、年金を受け取る方にどのような影響があるかを検証してみます。
まず、そもそも「支給停止基準額って何?」と思われる方も多いと思います。在職老齢年金とは、給料と年金額の合計が一定額を超える場合に、超えた額に応じて年金額を調整する制度となります。この「一定額」の基準(65歳以上)が「支給停止基準額」と考えると良いでしょう。
影響が出る65歳以上の在職老齢年金を確認
影響が出ると思われる65歳以上についてみてみましょう。65歳以上の在職老齢年金制度を確認すると、■給料と年金を合わせた額が「48万」までは、調整がされない
■「48万」を超えると、超えた額の2分の1が停止される
となります。
この「48万」のことを「支給停止基準額」と呼ぶわけですが、物価や賃金の動向により、この「額」は毎年見直しが行われます。
今回、この「48万円」について、変更があったということになります。
48万から46万円へ減額!?
先ほども書いたとおり、この変更は、去年に続き2年連続となります。この「48万円」は、既に昨年「47万」に変更されており、この4月から更に下がり「46万」になります。この「減額」は、年金受給にどういう影響を与えるかを具体例で確認してみましょう(※数字は分かりやすいように「ざっくり」としています)。
□事例
・年齢 65歳以上
・老齢厚生年金額 120万円
・給料(年収) 600万円
給料と年金を合わせた額は、
年金月額10万+給料月額50万(年収の12分の1)=60万
支給停止基準額を超えた額の2分の1が支給停止となりますので、
支給停止基準額が当初の48万なら、
(60万-48万)÷2=停止額 6万
これが、46万に下がると、
(60万-46万)÷2=停止額 7万
となり、停止額が1万増えることになります。停止額が増えると言うことは、当然支給される年金額が減る(このケースだと1万円)ということを意味するわけです。
たった「1万」では済まされないことも
同じ給料月額が50万円で、年金月額が4万円のケースでは、更なる影響が出ることがあります。先ほどの計算式に当てはめて、支給停止基準額が48万の場合、
(54万-48万)÷2=停止額 3万
年金月額4万から支給停止額3万を引くと、残りは1万。何とか1万円だけは支給されていることになります。これが、支給停止基準額が46万になることで、
(54万-48万)÷2=停止額 4万
となり、要は全額支給停止となるのです。
これだけ見ると、1万円支給されていたものが、ゼロになるだけなのですが、影響はそれだけではありません。その影響とは「加給年金」です。加給年金とは、65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいることで支給(その他の要件を満たす必要あり)され、65歳未満の配偶者がいる場合、年間40万ほど支給があります。
この加給年金、老齢厚生年金が1円でも出ていれば、全額支給されるのですが、このケースのように老齢厚生年金が全く出なくなると、加給年金も全額支給停止となってしまいます。
結構大きな影響ですね。
実際の計算は複雑です。詳しくは年金事務所等に問い合わせ、自分の受取る年金への影響を確認してみることをおすすめします。