不動産の物件情報を収集して、価格や立地、間取り、広さなどの条件で取捨選択をし、購入する候補をある程度まで絞り込むことは、インターネットや物件情報誌だけでも可能です。
しかし、実際にどの物件を購入するのか決めるためには、自分の目で現地を確認してみないことには何も始まりません。
そこで今回は、新築一戸建て物件(主に建売住宅)の見学をする際に気を付けたいポイントなどについてまとめましたので参考にして下さい。
相手のペースに乗せられないこと
一度にたくさんの現場を見過ぎると混乱することになりかねない
自分から「見せてもらいたい」と連絡をした相手がその物件の売主業者の場合であれば、基本的にその物件だけを見学することになるケースが大半です。
同じ現場内の異なる棟をいくつか見学することはあるでしょうが、違う現場の数か所に連れて行かれることはそれほどありません。モデルハウスの開設や、現地売り出しを実施しているところに、事前予約なしで訪れる場合も同様です。
そのぶんゆっくりと時間をかけて、自分のペースで見学をすることが可能です。その反面、来場者の多い現場などでは他の購入希望者と重なり、販売担当者からの説明を十分に聞けなかったり気になる部分を確認できなかったりする場合もあるでしょう。
一方、見学予約の連絡をした相手先が媒介業者の場合には、見たいと思った物件だけでなく、他の似たような物件をいくつも見せられることのほうが多いでしょう。
ときには、自分から希望をしていないのにも関わらず、「比較のため」といって中古一戸建て住宅や中古マンションを取り交ぜながら、いくつもの物件を見せられることもあります。
複数の異なる現場を見ることで、一日のうちにまったく違う構造やコンセプトで造られた物件を比較することもできて効率的な反面、見せられる数が多過ぎるとどれがどの物件だったのか分からなくなることも起こりがちです。
もちろん人によって異なりますが、いっぺんに見てそれぞれの違いをしっかりと意識できるのはせいぜい3~5物件程度ではないでしょうか。それ以上をまとめて見ると記憶が混乱したり、疲れから判断力や注意力が鈍ってきたりします。
実はこの「冷静な判断力を失わせること」を意図的に狙う媒介業者もあるわけですが……。
いっぺんに見せられた物件の数が多いときほど、冷静になることを心掛けるのと同時に、その場で結論を出したり業者に対して購入の言質を与えたりしないことが大切です。
とくに購入を急ぐ特別な事情がないかぎり、見学をしてじっくり検討、また見学をしてじっくり検討、といった作業を繰り返して構いません。日を改めて見学することを重ねていくうちに、どこをどう見るのかといった自分たちのトレーニングにもなるでしょう。
ただし、あまりにも慎重になり過ぎると、どんなにたくさんの物件を見ても決断ができず、いつまでも買えない状態に陥りかねませんので、ほどほどのバランスを保つことも必要です。
物件の現地へは電車、バス、徒歩で
最近はだいぶ少なくなってきたようですが、いつもどんなときでも必ず車で現れるような家族がいらっしゃいます。ご主人は「常に車だから」とか「車がちゃんと入るかチェックしたい」とか、いろいろと理由はあるでしょうが、物件見学の際にはできるかぎり最寄り駅まで電車で行き、バスや徒歩で現地へ向かっていただきたいものです。
家族全員が常に車で移動して誰も電車には乗らない、というケースはほとんどないでしょう。普段の買い物や通勤通学などで、家族のうち誰かは最寄り駅まで歩いたり電車に乗ったりすることが多いはずです。
電車の様子がどうなのか、駅前の雰囲気や利便性はどうなのか、駅からの徒歩時間が実際にどれくらいなのか、途中に危険個所や子どもに悪影響を及ぼすような施設がないのかなど、物件選択の一要素としてしっかりと観察をするべきです。
物件自体がどんなに良くても、その街に気に入らない要素があれば、落ち着いて暮らすことはできないでしょう。
車庫への入れやすさのチェックや、車での順路の確認は、購入候補物件を絞り込んでからでも遅くありません。
最寄り駅から物件までの道のりを歩いてみることも「購入候補物件を絞り込んでからでいいじゃないか」と考える人もいるでしょうが、住む街についての要素はもっと優先順位を上げて考えるべきです。
もちろん、購入候補物件を絞り込んだ段階では物件の現地から最寄り駅までの道のりだけではなく、スーパーや病院までの道路、子どもの通学路、日常の生活圏の道路や環境などについても、しっかり歩いて自分の目で(子どもの目線も意識しながら)確かめてみるべきです。
なお、媒介業者の車に乗せられていくつも物件を見て回ったときに、もし購入候補にすることができそうな物件があれば、最後にその物件の前に戻って降ろしてもらい、物件現地から最寄り駅まで歩いてみるようにしましょう。
「お客様を会社にお連れして戻るのが決まりですから」となかなか承諾をしない担当者もいるでしょうが、それは上司を交えて購入の決断を迫るための手段でしかありません。
建築途中の物件は情報の宝庫
新築物件の見学では、完成済み物件だけではなく建築工事途中の物件の場合も多く、その工事の段階によって、建物の基礎や床下、壁の内側、天井裏など、完成後にはなかなか分からない内部構造の様子が見られることもあります。ある程度の基礎知識がないと、建物構造上それが良いのか悪いのかといった判断は難しいのですが、いくつかの現場で比較することができれば、「こっちのほうが良さそうだ」と感じることはできるでしょう。
工事中の現場では清掃の様子や建材などの整理状態も確認してみましょう。必ずしもイコールではありませんが、乱雑な現場では工事そのものが雑になっていることも懸念されます。もし、タバコの吸い殻があちこちに散らばっているような現場があれば論外です。
逆に、清掃や整理整頓に目が行き届き、見学のときには監督や職人さんたちも気持ちよく迎えてくれる現場であれば、買主の存在を無視したような手抜き工事は起こりにくいでしょう。寡黙で無愛想な職人さんが素晴らしい仕事をするケースもあるでしょうが……。
なお、建築工事がある程度の段階まで進んでいないと、完成時の建物のイメージはなかなか掴みにくいものです。それなりの知識や慣れがないと、図面を見て実物を思い描くことも簡単ではありません。
購入を検討しようとする物件がそのような状態のときは、同じ施工業者による他の類似物件を見せてもらうことができないのか頼んでみましょう。
小規模な建売業者では他の現場が存在しないケースもありますが、他社が売主となっている現場の施工業者が同じというケースは往々にしてあるものです。
また、数棟の建売現場では1棟の工事を先行し、隣接する棟はまだ基礎工事の段階というようなケースも少なくありません。
先行する棟から見た眺望が、全体の完成時には大きく変わることもあり得ます。このようなときには全体区画の図面を見せてもらい、隣接する棟との位置関係や窓の配置などをよく調べることが必要です。
敷地の周辺もしっかりとチェックする
完成済みや完成間近の新築物件を見学する際に、建物の内部をくまなくチェックすることは当然です。間取りについても部屋数や広さだけでなく、日常生活の動線を意識しながらそれぞれの配置や出入りのし易さなどを検討します。建具などの可動部の動きや各設備の使い勝手も、実際に動かしながら確認してみましょう。いままでに使ったことのない新しい設備や機器が導入されていれば、それが本当に必要かどうかも含めて考えてみることが欠かせません。
しかし、建物の内部はじっくりと見学をするのに、外部はほとんど見ようとしない人が意外と多いようです。ところが、建物の周囲や隣地などに建物の良し悪しを判断する材料が隠れていることもあるため、油断することのできないポイントです。
建物の上階の窓からは、周囲の敷地に嫌悪施設や気になるものがないかどうかも忘れずにチェックしましょう。
隣地との境界が明確になっているかどうかはたいへん重要です。これがあいまいなままで、数年あるいは十数年経ってから隣地とトラブルが生じるケースも少なくありません。
都市部の建売住宅では、隣接して建てられる棟との間隔が極端に狭く、人が通り抜ける幅すらないこともあります。このようなところでは設備のメンテナンスに支障が生じたり、入り込んだ大きなゴミを除去できずにずっと残っていたりすることもあるでしょう。
建物の外部では給排気口のフードが適切に取り付けられているか、基礎部分の通気口が適切に設置されているか、施工不良個所はないかなど、十分に注意を払って観察しなければなりません。半地下車庫などの場合には、車路部分の傾斜の度合いにも注意が必要です。
また、物件の敷地だけでなく隣地や周辺道路についてもよく観察してみましょう。土の地面が異様に湿っていれば水はけの悪い地盤の可能性がありますし、隣地建物の基礎部分などに亀裂があれば、地盤が弱い可能性もあります。
いずれも断定的な判断はできない要素ですが、見学をしている物件側では問題の有無を調べたのか、あるいはどのような対策をしているのかといったことについて十分に説明を受けることが大切です。
また、周辺道路の舗装面に亀裂や凹凸が目立つようであれば、同様に地域の地盤が弱い可能性が考えられます。雨がやんで少し経ったタイミングで見学をする機会があれば、不自然な水たまりができていないかについてもよく観察してみましょう。
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