60兆個の細胞からできている人間のカラダ
卵子も精子も1つの細胞。それぞれが力を合わせて生殖に向けての準備をしています
私は17年あまり、様々な医療機関や研究機関に訪問してドクターや研究者にインタビューを重ねてきましたが、最近は健康を維持するためには、細胞を守る生き方が大事なのではないかということを強く感じています。
分かりやすい例として老化現象が挙げられます。年を取ると皮膚はしわしわになり、色がくすんできて、張りがなくなります。それをミクロの視点で見ると、細胞が傷害され、しぼんでいくからそうなるのです。喫煙者や日光を良く浴びる人の皮膚が黒ずみ、しわしわになるのもタバコや紫外線が細胞を傷害していると考えられています。
逆に言うとみずみずしい張りのある細胞が維持できていれば皮膚も良い状態に保たれるということ。最近は細胞保護を意識している女優さんや有名人が増えてきているので、50代、60代でも若々しく美しい方が増えてきていますよね.
それは皮膚だけの話ではなくカラダの至る所の細胞に言えます。
細胞の敵は活性酸素
赤ワインに含まれるレスベラトロールは代表的な抗酸化物質です
活性酸素とは酸素が化学的に活性になった化学種を指す用語で、一般に非常に不安定で強い酸化力を示します。
ヒトをはじめとする多くの生物は、生命維持に必要なエネルギーを得るため、絶えず酸素を消費しています。これらの酸素の一部は代謝過程において活性酸素と呼ばれる反応性が高い状態に変換されます。
通常、活性酸素は生体が本来持っている活性酸素消去システムによって速やかに処理されますが、オーバーワークやストレスの強い状態などで活性酸素が大量に発生する状況下では、十分に処理しきれないことがあります。こうした過剰な活性酸素によって、細胞機能低下や組織損傷が生じると言われています。先ほどの喫煙や紫外線の照射により、活性酸素が増える事も分かっております。
この活性酸素をいかに防ぎ、そして早く処理できるかが細胞保護の鍵を握っていると言えます。
細胞保護と不妊治療の関係性
一方、生殖医療について目を向けてみましょう。卵子も精子も1個の細胞です。卵子はカラダの中で最も大きい細胞で、精子は最も小さな細胞です。この2つの細胞が受精し、どんどん成長していくわけです。この小さな1つの細胞を男女お互いにベストな状態で作り出していくことが、スムーズな妊娠・出産に結び付くことは言うまでもありません。
しかし、今は卵子に取っても精子にとっても過酷な時代と言えると思います。晩婚化、生活習慣の変化、ストレスの増大など、体内で活性酸素にさらされる時間が長くなっているのです。
また、この生殖細胞を取り囲む器官やサポートする臓器もすべて細胞から成り立っている訳で、すべての細胞が快適に機能するためにも細胞保護的な思考が不可欠と考えられます。
活性酸素を防ぐ方法
野菜はポリフェノールやビタミンが豊富です
最近では野菜ジュースを自宅で工夫して飲む人が増えています。ジューサーも低回転で野菜の細胞やビタミンを壊しにくい製品も出てきており、それらを活用する人も多いようです。
不妊治療をされている方々に人気のザクロジュースも典型的な抗酸化物質の一つ。ポリフェノールの一種、エラグ酸が豊富に含まれており、アメリカではスーパーフルーツとして文献も多数発表されています。世界最大の文献検索サイトにはすでに450以上の文献が報告されており、注目度の高い食材と言えるかと思います。ザクロについての詳細は「不妊治療中にザクロが人気なのはなぜ?」をご覧下さい。
抗酸化物質が多く含まれる食品
抗酸化物質が多く含まれる主な食品として、以下のようなものが挙げられます。- ビタミンC (アスコルビン酸)……果物、野菜
- ビタミンE (トコフェロール、トコトリエノール)……植物油
- ポリフェノール (レスベラトロール、フラボノイド)……茶、コーヒー、豆、果物、オリーブオイル、チョコレート、シナモン、オレガノ、赤ワイン
- カロテノイド (リコペン、カロテン、ルテイン)……果物、野菜、卵
最後に
今回は細胞保護の観点から書いてみました。この分野は非常に奥深いので、また切り口を変えて色々とご紹介出できればと思います。最近は、疲労をどのように解消していくのかという抗疲労医学、そして加齢(老化)スピードをどのように減速させるかという抗加齢医学の研究が進んできており、これらはかなり関係すると分かっています。(参考:疲労と活性酸素の関係(大阪市立大学医学部 疲労医学講座))
また、私は不妊治療と、これらの疲労やアンチエイジングの関連も深いと考えています。特に35歳以上の妊娠についてはこの分野の調査と取材をして、何かよい情報をお伝えできないものかと考えております。