3号被保険者制度の批判と、得した人の批判は違う
私は「手続きを知らずに結果として年金が減った」、つまり善意の人は救済を堂々と受けるべきだと思います。これは「マジメに払った人が損」という問題と並べるべきではないからです。もともと、第3号被保険者制度というのは、「専業主婦は保険料を納めなくても国民年金がもらえる」という制度であり「その年金財源は会社員・公務員の年金保険料全体から捻出する」というおかしなものです。夫の保険料だけでなく、独身の人や共働きの夫婦の年金保険料から少しずつ引いてやりくりされています。
この制度そのものがスタートしたのは1986年4月からで、この時代には、「専業主婦にも自分の年金をもらえるようにする」という大事な役割がありました。しかし保険料をいきなり納めろといっても難しいので、こうした「負担ゼロ、年金あり」の制度が用意されたわけです。いってみれば、経過措置としてあるべき政策でした。
ところが、いつまでも廃止することができないまま、ずるずると時間が経ってしまい、むしろ手続きミスのフォローに時間と労力ばかりかけてしまうことになりました。最初の手続きについても専業主婦自身が市役所等に行くことになっていましたが、夫の会社経由で自動的に届け出できるようになったのはなんと2002年のことです。
過去の届出ミスについては何度も救済措置が設けられており、1990年代後半には「今手続きをすれば、過去の未加入期間分、全部年金をもらえるようになります」なんてキャンペーンをやっていたほどです。2005年からは過去の未届期間は基本的にさかのぼって救済されるよう法律も整備しています。
今回の件は、そうした保護の傘から漏れていた最後の残り、のようなもので、一連の流れを考えれば救済やむなしだなと思います(過去の経緯を知らない人ほど、「正直者がバカを見る」と声高に主張することでしょう)。
私が言いたいのは、「今回の救済はやむなし」だが「知らずに損する人が多発することそのものがおかしい制度である」ということです。そして、「この制度はそろそろやめるべき」ということです。
→専業主婦も年金保険料を払うべき。なぜなら働く子育て女性が損をするから。 次ページへ