心臓・血管・血液の病気/大動脈の病気・大動脈瘤・大動脈解離

大動脈瘤・大動脈解離の原因・症状・診断(2ページ目)

大動脈瘤や大動脈解離は命を奪う重い病気です。とくに大動脈解離は時間勝負で速やかな治療が命を救います。これらの病気の原因、メカニズム、症状から診断までを解説します。強烈な胸痛や背部痛があれば直ちに病院へ。危険であるのに症状がないタイプも多いため、平素の健康診断も大切です。

米田 正始

執筆者:米田 正始

心臓血管外科専門医 / 心臓病ガイド


大動脈瘤とは

大動脈瘤には形の上で2タイプ、場所によっても2タイプに分けられます。

■最動脈瘤の形による違い
  • こぶ状の嚢状瘤
  • だらだらと長く膨らんだ紡錘状の紡錘状瘤とでもいうべきもの

特に嚢状瘤はサイズが小さくても破裂しやすいため、より注意する必要があります。

Location

大動脈瘤の位置と名前です

■大動脈瘤のできる場所による違い
  • 胸部にできる胸部大動脈瘤
  • 腹部にできる腹部大動脈瘤

両方を併せもつものとして、胸部から腹部にまたがってできる広範囲なものを「胸腹部大動脈瘤」と呼びます。また、胸部大動脈瘤のなかに、大動脈基部拡張症、上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤があります。それぞれ手術や治療のタイミング、方法が違うため、診断でこれらを区別することは重要なのです。

大動脈瘤の原因・メカニズム

一般に大動脈瘤は動脈硬化が原因であることが多いとされています。ある種の老化現象ともいえます。それ以外では動脈壁の変性疾患、外傷、炎症、感染、先天性などがあります。

動脈硬化は年齢とともに誰でも起こり得るもので、中でもタバコ、高血圧、糖尿病、高脂血症、慢性血液透析などがリスクとなります。そのため原因が似ている狭心症や心筋梗塞と並行して増える傾向にあります。腹部大動脈瘤では大動脈の壁の弱さが指摘されることも。

大動脈瘤の症状・診断法

ほとんどの動脈瘤は無症状。つまり患者さんご自身では気づきにくいのです。

そのため、他の病気などのために検査をした際に偶然発見される場合が多いです。健康診断などで行われている胸部レントゲン検査では、胸部動脈瘤があっても発見されない、見逃される場合が多いのです。専門家でしたらレントゲンでもある程度以上わかりますが、一般医ではわかりづらいことが多いのです。

CT

大動脈瘤はCT等の検査によって正確に診断できます。写真は造影剤なしでもCTがここまで情報を提供してくれることを示しています。赤いところが瘤です

CTやMRIによって患者さんの苦痛なく、正確な診断ができます。大動脈基部などは心エコーでも診断できます。腹部大動脈瘤は腹部エコー検査で診断できますが、CTによってより正確な診断が可能です。現在はCTやMRIなどで、病変を3次元でとらえて詳細に検討できるようになり、血管造影検査は必須ではなくなりました。

動脈瘤は症状があまり出ない病気のため、定期健診で年1度あるいは2-3年に一度CTを撮ってもらうか、動脈瘤の治療実績のある医師に相談されるのが良いでしょう。胸部大動脈では45mm以上(正常30mmぐらい)、腹部大動脈では30mm以上(正常20mmぐらい)を一般に瘤と診断します。なお嚢状瘤は小さくても瘤と診断されます。

大動脈瘤のなかには症状が出るタイプもあります。

  • たとえば胸部大動脈瘤のうち、弓部のものは声がかすれる(さ声)ことがよくあり、この症状があればCTを検査すれば破裂までに助かる可能性が高くなる
  • ときに気管が圧迫されるため呼吸困難が見られる
  • ときに食道が圧迫されて嚥下困難が見られる
  • 腹部大動脈瘤ではお腹の中心部、おへそのあたりに拍動するこぶが触れることがある

そうした疑いがあれば、直ちに専門医にご相談されるのが安全です。なかでも腹部大動脈瘤が破れ始めた段階では痛みが出ることがあります。これを切迫破裂とよび、急いで病院へ行かなければ命を落としかねません。

いったん破裂したら症状は重く、激しい痛み、呼吸苦、意識障害などを起こし、突然死することもあります。切迫破裂のように数日間症状がじわじわ持続することもあります。

大動脈瘤で手術が必要になるケース

大動脈が本来のサイズ、つまり場所にもよりますが、直径20~30mmのところが瘤になり直径50~60mmになれば破裂する危険性が高くなります。

破裂

大動脈はあるサイズを超えると急に破裂しやすくなり注意が必要です

胸部では直径55~60mm、腹部では直径45~50mmが目安ですが、マルファン症候群などの結合織疾患の患者さんではそれより一回り小さい段階でも破裂しやすいため、早めの手術が勧められています。それはいったん破裂するとあっという間に体内で大出血を起こし、血圧が急速にゼロに近づき心臓が止まったり、運よくすぐに止まらなくても全身がやられて手術が間に合わなくなるからです。

一方、嚢状瘤はそれより小さくても拡大傾向があれば手術が必要となります。仮性瘤は破れることが多いため、診断がつけば手術へと進むことが多いです。

次ページでは大動脈解離について解説します。

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