かつては限定された働き方だった派遣が、今ではだれもが選択しうるふつうの働き方になり、働く人も十人十色だと、「派遣制度の何が問題なのか?(構造編)」で述べました。今回は、派遣の中でも代表的な「事務系派遣」と「製造業派遣」を例にとって、働き方の違いをみていきます。

「事務系派遣」と「製造業派遣」の特徴

まず、事務系の部署のアシスタントとして配属された「事務系派遣」と、ものづくりのラインに従事する「製造業派遣」を想定して、働き方の違いをみてみましょう。現実には、例えば、製造工場の総務課に事務アシスタントとして派遣されるスタッフもいるので、事務系派遣・製造業派遣というくくりだけで、すべてが語れるものではありませんが、多様な働き方を知っていただく一助になればと思います。

■「事務系派遣」の働き方の特徴    
  • 勤務地:都市部が多い
  • 勤務時間:平日・日中帯が中心
  • 仕事の種類:オフィスワーク
  • 安全性:業務上ケガをする可能性は低い
  • 派遣形態:同一の職場に少人数で派遣されることが多い
  • 業務範囲:担当業務の明確化が難しく、あいまいになることがある
  • 仕事の特徴:仕事によっては高いコミュニケーション能力が求められる
  • リーダー業務:アシスタント職の場合はほとんどない
■「製造業派遣」の働き方の特徴
  • 勤務地:郊外や地方が多い
  • 勤務時間:交代制や夜間勤務があることも
  • 仕事の種類:体をつかう仕事
  • 安全性:業務中にケガをする可能性がある
  • 派遣形態:同じ生産ラインや製造拠点に複数のスタッフが派遣される
  • 業務範囲:梱包、検品など担当が明確だが、製造業特有の業務がある
  • 仕事の特徴:スピーディで確実に作業をすることが求められる
  • リーダー業務:チーム派遣では、リーダー業務もある

同じ「派遣」という働き方でも、事務系派遣と製造業派遣ではずいぶん異なっていることがわかります。どのような違いがあるか、細かくみていきましょう。

まず、勤務地。例えば大企業の場合、本社機能は東京や大阪などの都市部にあるものの、生産拠点は広大な敷地があり環境に恵まれた郊外や地方にあることが多い。そのため、事務スタッフのニーズは都市部で、生産ラインのニーズは地方で発生します。勤務時間も、昼夜問わずラインを動かしている工場では、夜間勤務がある一方で、事務系派遣は定時で終わらない仕事を残業で対応します。製造業では人口の少ないエリアで働く人を確保するために、寮などの住まいを準備して全国から人を受け入れることもあります。地元の雇用環境が厳しく、就職先が見つからない人が住まい付の派遣で就業していることも少なくありません。

また、製造や流通などモノを組み立てたり体を動かす仕事では、怪我のリスクが高く労災の発生率が高い一方で、電車で通勤しデスクワークを行う事務系派遣では、製造業派遣ほどには怪我にあう確率は高くありません。製造業派遣を中心に保険加入率が問題視されたのもこのような事情があります。

派遣会社からの派遣形態も、職場に1人、2人というアシスタントのポジションに複数の派遣会社が競合する事務系派遣に対し、製造業派遣では「来週、急に増産が決まったので検品作業に30人来てほしい」というオーダーに、派遣会社はできるだけたくさん自社からスタッフを派遣しようとします。さらに人数が多い場合は、派遣スタッフをとりまとめるリーダーも派遣する。事務系派遣でも、コールセンターなど集団で派遣される仕事ではリーダーの派遣がありますが、製造業派遣の方が恒常的です。

仕事内容も、関係者とやりとりしながら仕事を進めることが求められる事務系派遣に対し、タスクを確実に、正確に実施することが求められる製造業派遣。前者が、業務経験などに加えコミュニケーション能力が要求されるのに対し、後者は、コミュニケーション力以上に、期日までに正確に業務をこなすなど、経験に裏付けられた確動性が重視されるという特徴があります。

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