「DESIGN-R」……床ずれ(褥瘡)の客観評価ができる指標
日本褥瘡学会は、2002年に深さ(D)、浸出液(E)、大きさ(S)、炎症(I)、肉芽(G)、壊死組織(N)、ポケット(P)の7項目からなる、褥瘡の評価ポイント(DESIGN)を発表し、これは広く日本の病院で普及しました。2008年、さらにこれらの項目に重み付け(Rating)を行い、症例間の比較も可能にする評価方法が発表されました。これが「DESIGN-R」という方法です。
あまりに細かな評価は一般の方には必要ないと思いますが、ぱっと見て、どういう床ずれを重症と考えるかの判断ができれば役に立つかと思います。褥瘡の重症度を判断する7項目について、以下で解説します。
褥瘡の深さ (Depth)
皮膚の一部に浅くくぼみがあります この部分がd2です それ以外は発赤で深さはd1となります
d1: 持続する皮膚の発赤(赤み)
d2: 真皮までの損傷(皮膚にごく浅いくぼみが見られる状態)
深いくぼみが皮膚に見られます D3です
D4: 皮下組織を超える損傷(筋膜、腱、
D4 筋膜に達する深さです
骨膜などに達する非常に深いもの)
D5: 関節腔、体腔に至る損傷(股関節、腹腔に
股関節に達する床ずれ D5の深さです
達するものでめったに見られない)
黄色の壊死組織のため判定不可能
黒い壊死組織のため判定不可能
褥瘡の浸出液(Exdate)
ガーゼ交換に要する1日の回数で判定します。e0: ガーゼ交換なし
e1: 少量 毎日のガーゼ交換なし
e3: 中等量 1日1回のガーゼ交換が必要
E6: 多量 1日2回以上のガーゼ交換が必要
褥瘡の大きさ(Size)
長径と短径を直交するように大きさを測定
s0: 皮膚損傷なし
s3: 皮膚損傷が4未満
s6: 皮膚損傷が4以上16未満
s8: 皮膚損傷が16以上36未満
s9: 皮膚損傷が36以上64未満
s12: 皮膚損傷が64以上100未満
S15: 皮膚損傷が100以上
褥瘡の炎症/感染 (Inflammation/Infection)
i0: 局所の炎症徴候なしi1:局所の炎症徴候あり(発赤、腫脹など)
皮膚の発赤(赤み)が見られます
I3: 局所の明らかな感染徴候あり(膿、
膿、悪臭が認められました
悪臭など)
I9: 全身的影響あり(発熱など)
褥瘡の肉芽組織(床ずれ部位の肉の赤身のようにみえる組織)
(Granulation)
g0: 治癒あるいは創が浅いため評価できないg1: 良性肉芽が創面の90%以上を占める
ほとんどの創に赤みのある組織が見られる
大部分は赤い組織で占められる
G4: 良性肉芽が創面の10%以上50%未満を占める
G5: 良性肉芽が創面の10%未満を占める
10%未満しか肉芽がみられない
G6: 良性肉芽が全く形成されていない
白い組織で床ずれが占められている
褥瘡の壊死組織 (Necrotic tissue)
N3: 柔らかい壊死組織あり
黄色の壊死組織
N6: 硬く厚い壊死組織あり
黒色の壊死組織
褥瘡のポケット(Pocket)
毎回同じ体位で測定しポケット全周で一番長い2点の距離を長径としそれと直交するポケットの長さを短径とする。ポケット長径×ポケット短径-床ずれ長径×床ずれ短径を計算してこの大きさをポケットととする。点線の範囲がポケット
p0: ポケットなし
P6: 4未満
P9: 4以上16未満
P12: 16以上36未満
P24: 36以上
実際の治療シーンでの指標の使い方
以上すべての7項目のうち、深さ以外の6項目の合計点で評価を行います。最後に具体的な症例写真と併せて、一例を挙げておきましょう。初期の褥瘡 重症です
上の指標に当てはめて診察した場合、
「DU - e3 s9 i1 G6 N6 p0」となります。
壊死組織があるため深さは不明(DU)。ガーゼ交換は1日1回。サイズは皮膚損傷が36以上64未満(s9)で、炎症徴候があり(i1)、良性肉芽が全く形成されていおらず(G6)、硬い壊死組織(N6)、ポケットなし(p0)。以上の数値を足して、合計25点の重症症例と判断できます。
治癒した褥瘡
皮膚損傷の深さはなく(d0)、ガーゼ交換なし(e0)、皮膚損傷はなく(s0)、炎症徴候もなし(i0)。赤く見える部分もなく(g0)、壊死組織もなく(n0)、褥瘡のポケットもありません(p0)。以上を足しあげて合計0点。元の皮膚に戻っていると判断できます。