軽く見がちな高血圧に要注意!
先進国では血圧の自己測定が増えています。米国の指導は、傍らで5分間静かに座ってから、2分間隔で2回測定して平均値を出します。
糖尿病治療はどうしても血糖コントロールばかりに目を奪われてしまい、どこの国でも一般医レベルでは血圧は二の次になりがちです。
降圧薬は実に多種多様で、血圧はいかようにでも下げることができますが、どうもあまりにも一般的なので「誰がその患者の血圧を管理するか」があいまいになっています。
つまり、掛かりつけ医がいるとすれば、その医師が患者の血圧を管理するのか、受診している糖尿病や泌尿器科、循環器内科などの専門医の誰かが責任をもって管理しているのか、患者にも医師にも分からないのです。降圧薬を処方している医師が糖尿病に詳しくないと困りますね。
特に掛かりつけ医もなく、糖尿病クリニックだけに定期的に通っているのなら、担当医に患者の方から「掛かりつけ医」として診察してくれるように依頼しましょう。
高血圧は糖尿病があろうがなかろうが、心臓発作や脳卒中、眼病、腎臓病のリスクを高める「サイレントキラー」です。そして、これらが糖尿病の合併症でもあることは、ご承知のとおり。「糖尿病+高血圧」の組み合わせでは、心臓発作や脳卒中のリスクは2倍になってしまします。さらに、末梢血管病も増え、網膜症もさらに悪化し、腎臓病にも直に影響が出てしまいます。
血圧が高くなった場合の対処法
1型糖尿病と2型糖尿病では、高血圧の始まり方が違います。若年発症が多い1型糖尿病では糖尿病腎症の進行と共に高血圧になるのに対し、2型糖尿病はメタボの延長線上にありますから、糖尿病と診断された時に既に高血圧症のことも珍しくありません。加齢や肥満は糖尿病や高血圧の共通項ですから、高血圧の原因も糖尿病とは限らないのです。権威あるJAMA(米国医師会誌)2010年7月7日号に興味ある記事が載りました。
糖尿病や高血圧、冠動脈性心疾患があっても、薬で厳格な正常血圧(収縮期血圧130mmHg未満)を目指すより、ライフスタイル改善と降圧薬の組合せで通常の血圧コントロール(収縮期血圧130~139mmHg)を目指した方が効果的だと言うのです。
これは50歳以上の「糖尿病+冠動脈性心疾患」の患者を対象に、130/85mmHg未満のタイトコントロールと収縮期血圧130~139mmHgの通常コントロール、同じく140mmHg以上の高血圧群の死亡率や死に至らなかった心筋梗塞、脳梗塞の割合を比べたものです。結論としてタイトコントロールの有為性は証明できず、むしろ降圧薬の副作用のせいか、長期では逆に心血管病を含む総死亡のリスクが高まるという報告が出ています。そして、140mmHgを超えていた群がワーストでした。やはり、140/90mmHgを超えたら高血圧治療のサインが出たことになります。
糖尿病や高血圧症は全身の病気ですから、ライフスタイルの改善は数値以上の全てに効果があるのでしょう。さて、生活習慣の見直しでどのくらい血圧が下がるのでしょうか?こんなデータが米国で発表されています。[Clinical Diabetes,Number3.2010]
- BMI 25以上の人が10kg減量すると、収縮期血圧(血圧の「上」の数値。以下省略)が5~20mmHg低下
- 減塩食(食塩6g/日 未満)で2~8mmHg低下
- 野菜・果物・穀物中心のヘルシー食で8~14mmHg低下
- 活発な身体運動で4~9mmHg低下
- 適量のアルコール摂取(男性で缶ビール350ml×2/日、女性で×1/日) 2~4mmHg低下
米国糖尿病学会のガイドラインでは、医師が降圧薬を選ぶ時に、患者の血糖コントロールを悪くしないように、高脂血症を悪化させないように、末梢血管障害や肺気腫、痛風などと問題を起こさないように求めています。
裏を返せば、降圧薬は糖尿病に利点も欠点もあるのです。糖尿病から見た降圧薬は長くなるので改めて解説します。まずは生活習慣の見直しから始めましょう。
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