2011年 住宅市場は回復軌道へと躍進
新年の年明けから3週間余り、いたる所でマンション市場の底入れを実感できるデータが散見されるようになりました。1月19日に不動産経済研究所から公表された「首都圏マンション市場動向(2010年のまとめ)」によると、2010年1年間に新規供給された新築マンションは2009年(3万6376戸)に比べて22.4%増の4万4535戸となり、2004年以来、6年ぶりの前年比プラスとなりました(下グラフ参照)。
消費者マインドの改善を原動力とした市況の回復があり、各デベロッパーが新規販売できるだけの企業体力を取り戻したことも無関係ではないでしょう。供給数の縮小はマーケット(市場規模)の縮小を意味するだけに、今回のニュースはポジティブな話題として受け取れます。
また、倒産件数の変化からも明るいきざしが見られました。民間信用調査会社の東京商工リサーチが1月13日に発表した全国企業倒産状況によると、2010年1年間に倒産した不動産業者(負債総額1000万円以上)は前年比26%減の441件となりました。08年、09年と2年連続で500件台だった最悪期から脱出し、昨年、400件台へと回復することができました(下表参照)。
さらに、住宅新報社が昨年末、業界主要企業経営者にヒアリングした「2011年の景況見通しアンケート」でも、今年は良くなるとの見方が全体の4割を占めました。依然、厳しさが続くと見る経営者が過半数を占めてはいるものの、回復への期待が高まっていることがうかがえます。こうして見ると、どうやら住宅市場は2010年がボトムだったと断定しても間違いなさそうです。
アーバンエステートの会長らが詐欺罪で逮捕 被害額は約35億円
しかし残念なことに、すべてが順風満帆ではありませんでした。年明け早々、回復の足を引っ張る悪材料が飛び込んできました。2009年3月に自己破産した埼玉の注文住宅会社「アーバンエステート」の元会長らが、破綻状態であることを認識しながら契約者から前払いで工事代金を詐取した容疑(詐欺罪)で埼玉県警に逮捕されました。報道によると、約500人の施主から前払い金として合計で約35億円をだまし取っていたそうです。一部は施工費に充てられていたものの、同社社長は月額350万~500万円の報酬を得ていたとされており、高額な役員報酬や従業員の歩合報酬などに充てられていたのではないかと指摘されています。
注文住宅に代表される請負契約では、工事の進行に応じて代金を分割して支払うのが通例になっています。ところが、アーバンエステートは「代金を割り引く」「オプションを無料にする」と工事発注者(消費者)に話を持ちかけ、建物完成前の“早期支払い”を勧誘していました。
契約時に支払う前払い金は一般的に1割~2割というのが相場ですが、被害者の中には1000万円以上を支払ってしまった人もいました。その後、すくに会社は経営破綻してしまい、工事は未着工のまま泣き寝入りという最悪の結末です。自己責任という意味では被害者にも少なからず油断があったわけですが、私利私欲のために弱者を食い物にする蛮行ぶりには開いた口がふさがりません。
思い返せば、木造注文住宅の設計施工・販売を行なう「富士ハウス」の倒産時(2009年1月)にも同様の被害がありました。にもかかわらず、なぜ、同じ悲劇は繰り返されるのでしょうか?―― 改めて根本原因を究明し、早急に予防策を立てる必要があるでしょう。
そこで、次ページで考えられる根本原因を、私、ガイドが分析してみることにします。