ローマ時代の遺跡と中世時代の建物が合体、
クリュニー中世美術館
サンジェルマン大通りとサンミッシェル大通りの交差点という、便利な場所に位置するクリュニー中世美術館は、二つの重要な文化財によって構成されています。まず敷地の部分は、大昔の1世紀頃ローマ時代の公共浴場となっていたところで、今でも遺跡として保存され一部展示室でも公開されています。その後長い時を経て15世紀末、その公共浴場跡にブルゴーニュの修道士の邸宅として建てられた建物が1843年に美術館として生まれ変わりました。中世という時代に焦点を充てた、豊富な作品群
クリュニー美術館では、一般的にヨーロッパで中世と呼ばれている5世紀から15世紀の時代の美術作品約24000点が所蔵されています。中世は更に5世紀のローマ時代、5~10世紀の中世初期、11~12世紀のロマネスク時代、そして12~15世紀のゴシック時代と分けられ、それぞれの時代の特徴と変遷を見ることができます。美術館は2フロアで構成され、1階にはローマ時代の公共浴場と中世時代の教会に使われた彫刻や建築が展示されています。2階には、絵画、彫刻、タピスリー(織物)、工芸品、ステンドグラス、聖書などが展示され、騎士たちが活躍した戦国時代の鎧や武器なども見ることができます。
最大の見どころは、五感をテーマにした連作のタピスリー
クリュニーで見逃してはならない作品が『貴婦人と一角獣』という6枚で構成された連作のタピスリーです。2階奥の一室がまるまるこの作品で占められ、暗い空間から浮かび上がる赤いタピスリーが幻想的。厳かな展示室の雰囲気に、この作品が特別なものだと感じることができるでしょう。このタピスリーは1882年に地方の城で発見されたもので、作家ジョルジュ・サンドがこの作品について取りあげたことにより有名になったという背景があります。6枚のタピスリーはそれぞれ味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚の五感、そして欲望を表現し、角が一つしかない想像上の動物である一角獣と貴婦人を中心に構成されています。暗喩的な作風は、一つの壮大かつ緻密な絵本を見ているかのよう。日本語の作品解説も置いてあるので、そちらを見ながら鑑賞するとより理解が深まり楽しむことができます。
鑑賞後は、庭園で一休み
中世の濃厚な世界にどっぷり浸かった後は、美術館併設の庭園に出てみましょう。水が流れ、緑が豊富に生い茂った空間に開放感を味わえます。建物を振り返ると、ステンドグラスの窓や小さな回廊が中世時代を彷彿とさせてくれます。ローマ時代の公共浴場跡はサンミッシェル大通り側に位置し、外側からの見学のみなので、美術館に入る前もしくは出た後に見ておくことをお忘れなく。
<DATA>
■Musée de Cluny - Musée national du Moyen Age
住所:6, place Paul-Painlevé, 75005 Paris
TEL:01 53 73 78 16
アクセス:Cluny la Sorbonne(メトロ10)より徒歩0分
開館時間:9:15~17:45
閉館日:火曜、1/1、5/1、12/25
入館料:8ユーロ、毎月第一日曜日は無料