療養食・食事療法/生活習慣病・メタボ対策の療養食・食事療法

生活習慣病でもおやつはOK? 食事療法中のお菓子

生活習慣病の治療として推奨される食事療法。とかく、お菓子やお酒などの嗜好品は、悪者にされがちです。カロリー制限や血糖コントロールが必要な人が、お菓子と上手に付き合うための方法をご紹介します。

井上 真理子

執筆者:井上 真理子

医師 / 生活習慣病ガイド

生活習慣病の食事療法は、とにかく継続が大切。
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見た目にもきれいなお菓子にはついつい手が伸びてしまいます


食事療法を続けている患者さんからの質問のなかには、お菓子やお酒などの嗜好品に関するものが少なくありません。これらは生活習慣病の食事療法のなかでは「好ましくない」ものなので、できる限り控えるようにと言われています。確かにこれは正論なのですが、お菓子やお酒は生活のなかのささやかな楽しみでもあるのも事実。禁止しても、実際にしっかり守るのは難しいというのが現実です。

今回はお菓子に話を絞って、食事療法について解説したいと思います。

生活習慣病で、「お菓子はダメ」と言われる理由

まず初めに、なぜお菓子がいけないのかを確認しておきましょう。

一番の理由は、通常の食事にお菓子をプラスすると、すぐに1日の必要カロリーを上回ってしまうためです。カロリーの摂りすぎは体重の増加、ひいては肥満につながります。では、お菓子のカロリーの分だけ食事を減らせばよいと思うかもしれませんが、そうすると、身体に必要な栄養素を十分にバランスよく摂るのが難しくなるという問題がおきてきます。また、お菓子は大きさの割に高カロリーなことが多いため、カロリーの割にはお腹にたまらず、すぐお腹がすいてしまい、さらに何か食べることになりかねません。

また、お菓子は食事と食事の間に食べる「間食」であることが多いため、糖尿病においては3回の食事以外に血糖値を上昇させることになり、血糖コントロールを乱すことになってしまいます。

でも、甘くておいしいお菓子は、日々の生活のなかの楽しみである場合も多く、一概に禁止すると、生活の質を落としてしまったり、実際には患者さんが守れなかったり、という場合も多いのです。

「お菓子禁止」は実際には無理?

少し前ですが、ある糖尿病に関するサイトのなかで、糖尿病の患者さんに対する間食指導をどうするかという連載が行われました(糖尿病ネットワーク「糖尿病患者さんの間食指導をどうする?」)。これは、医師や栄養士さんを対象にした企画でしたが、そもそも、外来通院されている糖尿病患者さんを対象に行ったアンケートで、およそ1/4の患者さんが毎日おやつを食べていると答えたことが発端だったそうです。

そこで、これまでどおりに「おやつ禁止」と指導を続けるのは現実的でないのでは?という提案が行われたのです。かといって、お菓子をすっかり容認してしまっては生活習慣病の改善はできません。要は、マイナスの少ない食べ方を考えることが大切ということでしょう。そのポイントとなる思う項目を簡単にまとめてみました。


生活習慣病でも食べてよい? 上手なお菓子の選び方

一概に「お菓子」と言っても、ケーキやお饅頭、おせんべいなど、いろいろなものがあります。どのようなものを選ぶのがよいのでしょうか? 一般的に、洋菓子は和菓子よりも脂質が多く、 高カロリーなことが多いので、ケーキよりお饅頭の方がいいと言えます。

また、食物繊維の多いものは腹持ちもよく、血糖値の上がり方も遅いので、そういったものを選ぶのもひとつの工夫でしょう。「お菓子=甘いもの」、ということで言えば、お菓子ではない甘いもの、例えばサツマイモなどで代用するという方法もあります。食物繊維も豊富です。この場合は、食事をその分減らしても、1日の栄養バランスの崩れを防ぐことができます。

さらに最近では低カロリーお菓子を目にすることも多くなりました。そういった商品は、血糖値の上昇も緩やかにする工夫がなされているものが多く、糖尿病の患者さんでも、そういったお菓子食べて、ほとんど血糖値の上がらない方もいるくらいです。

なるべく避けるべきなのは清涼飲料水

逆に、甘いもののなかでどうしても我慢していただきたいものもあります。それは糖質の入った飲み物。特に炭酸飲料は、炭酸が入っている分、甘みを感じにくいので、かなりの量のお砂糖が含まれています。例えば、コーラ1本でスティックシュガー約13本分、すなわち砂糖約40gを含みます。160kcal近くになるため、おにぎり1個とほぼ同カロリーです。缶コーヒーは100kcal前後のものがほとんどですし、スポーツ飲料も意外に糖分が多いので同じく注意が必要。

また、これらは飲み物ですから、「間食している」という意識がなく摂っている場合が多いように思います。実際の診察で、「おやつなど、甘いものは摂っていますか?」との質問に「摂っていません」と答えた方にさらに細かく質問していくと、「炭酸飲料を1日1Lくらい飲んでいました」という事実が浮かび上がってくることがしばしばあります。最近ではカロリーゼロもしくはカロリーを抑えた飲料が増えてきていますので、購入前にカロリー表示を確認することをお勧めします。


生活習慣病の場合の、上手なおやつのタイミング

通常、おやつは午後3時が一般的ですが、糖尿病に関して言えば、食事と食事の間に何か食べることは血糖値を乱すことになるため、勧められません。その場合には、食事の時間に、食事の一部としてお菓子も食べるようアドバイスしています。体重を減量したい場合には、夜の摂取カロリーを減らすと効果的なので、どうしてもお菓子を食べるなら活動量の多い日中のほうが悪影響が少ないでしょう。

実際の診療のなかで、午後3時の次に多いおやつの時間は夕方5時から7時くらい。これは、仕事が忙しく、夕食が遅くなりがちな人が、夕食までのつなぎとして食べるおやつのようです。この場合、おやつを我慢して空腹に耐え、10~11時に夕食を摂ると、食欲が亢進してしまい、就寝直前にたくさん食べすぎることになりかねません。ですから、ある程度のところでなにかしら食べることは一概に悪いとは思いません。ただし上で解説した通り、何を食べるかという選択は重要だと思います。

オリジナルかつテーラーメードの食事療法を

繰り返しになりますが、どの程度の食事療法が必要かには個人差があります。生活習慣病のコントロールがとても悪い時には厳しくしなくてはならないのはもちろんですが、よくなってきたときに、お菓子などの嗜好品をどのくらい控え続けるべきかは難しい問題です。

実際には、自分のなかでルールを作り、それを守った結果を血液検査で確認し、必要があれば改善していくという方法で試行錯誤を重ね、それぞれの許容範囲を探っていくことが重要だと思います。

どのような方法がベスト化は患者さんのタイプにもよりますし、それぞれの主治医の方針もありますので、よく相談しながら、ご自分のオリジナルの食事療法を見つけていってください。
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