住みたい街 首都圏/住みたい街の見つけ方

猥雑さが人気? 今夜は横丁で一杯いかが

飲食業界で最近のブームは横丁。一緒に飲んでいる人の体温が感じられるほどの距離感、猥雑さ、熱気その他、横丁には独特の雰囲気があり、それが人気を呼んでいるのだとか。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

混雑しているのが心地よい、
横丁、小路は人間の距離感が縮まる場所

赤羽のOK横丁

朝から飲める街、赤羽のOK横丁。古い街には横丁が多く残されており、赤羽にはこれ以外にも何カ所かあり、風俗店などがある場所も

人間は無意識のうちに他人との距離をとろうとするものです。狭いオフィスで多くの人が働いていたり、混雑した街を歩くことに疲労を感じるのはそのため。とはいえ、他人との距離が近い、混雑していることを心地よく感じる空間というのも、それはそれで存在しますから、人間というのはおもしろいもの。都会でいえば、横丁、小路などと呼ばれるスペースはそのひとつでしょう。




新宿の思い出横丁

新宿の線路際にある思い出横丁。当初からすると半分ほどに縮小されてはいるが健在。取り壊しの話も出てはいるが……。渋谷にも線路際に似たような横丁がある

辞書的にいえば、横丁とは表通りから横へ入った町筋、また、その通りのことを指し、小路とは「こみち」が変化したもので、幅の狭い道、狭い通りのことですが、横丁、小路と聞いて多くの人が思い起こすのは、商店や飲食店が並ぶ、賑やかな場所でしょう。店舗中心の横丁でいえば、上野のアメヤ横丁や川越の駄菓子横丁などが知られたところですし、飲食店でいえば、神楽坂の本多横丁、新宿の思い出横丁、町田の仲見世横丁……と枚挙に暇がないほど。








阿佐ヶ谷のいちょう小路

阿佐ヶ谷駅近くのいちょう小路。中央線沿線にはこうした飲食店が集まっている路地があちこちにある

こうした横丁、小路の中には戦後の闇市から発展したものも多く、人がすれ違うのがやっとというほど細い路地に間口の狭い店舗が並び、膝付き合わせるという言葉通りの状況がそこかしこに。普通だと他人の身体がここまで近い状態はさほど気持ちが良いとは思えないはずですが、横丁の飲み屋さんでは許せてしまうから不思議です。また、チェーン店の居酒屋さんの、あまり愛想が良いとはいえない店員さんたちとは異なり、こうした店のおかみさんや大将は人あしらいが実に上手。いい気持ちにさせてくれます。

辰巳新道

門前仲町の近くにある辰巳新道。横丁でなく新道というのが粋な感じ。30軒ほどの店が並び、2階は店主やバイトさんなどの住宅になっていることも。飲んでいる人、店主の年代はかなり高め

しかし、こうした昔ながらの横丁、小路は少しずつ姿を消しています。おかみさん、大将が一人でやっているような店では高齢化が大きく影響していますし、闇市の、建築基準法などとは無縁の一部の建物は防災など面から建替えを迫られるケースもあります。







吉祥寺のハーモニカ横丁

吉祥寺のハーモニカ横丁。子どもの頃にはおがくずの中に鶏卵を入れて売っている店があったはずだが、もちろん、今はすでになし。しゃれた店が増えた

その一方で吉祥寺のハーモニカ横丁のように、世代交代が上手に行われ、新しい業態の店舗や飲食店が入れ替わり立ち代り登場、古さ、狭さを魅力に変えている例もあります。私にとって吉祥寺は子どもの頃からのなじみの街ですが、食料品や衣料を売る店が多かった往時からすると、今のハモニカ横丁は昔ながらの魚屋あり、エスニックレストランあり、北欧の雑貨屋あり、しゃれたバーありと店の種類も対象年代もさまざま。建物は大分くたびれているはずですが、それでも活気は相変わらず。おもしろい場所です。







恵比寿横丁

恵比寿横丁。ここを手がけた会社は他にも同様の横丁形式の飲食店をいくつも手がけている

また、最近では横丁の雰囲気を感じられる飲食店街を作るというフードビジネスも目につくようになりました。たとえば、恵比寿にできた、その名もずばり恵比寿横丁。恵比寿はもともと、闇市風情を残す市場が多く残っていた街ですが、ここはそのうちのひとつ、山下ショッピングセンターという市場の跡地を利用したもの。薄暗い路地にはおでん、串揚げから肉寿司(!)まで13店がぐちゃぐちゃっと並び、猥雑な雰囲気がいっぱい。






もつ焼き

新宿の思い出横丁といえばモツ焼き屋さんが多いことで有名。こちらは新宿でもつ焼きを始めたといわれる宝来屋さんの一品。その他の横丁でも以前はもつ焼き、焼き鳥、おでんなどが主流だったが、最近はバリエーション豊富。エスニック系も目立つ

恵比寿の場合は、もともとの市場の雑然とした雰囲気を利用していますが、最近ではビルの中や高架下を利用した、新たな「横丁」も登場、景気の良くない飲食店業界にあって快進撃を続けていると聞きます。整然、清潔を良しとしてきた私たちの社会ですが、あまりにぴかぴか、つるつるは疲れます。そこで、たまには横丁のぐたぐたな雰囲気に浸っててれてれ飲みたい、そんなところでしょうか。と、書いているうちに私もどこかの横丁で一杯という気分に。さて、どこへ行きましょうか。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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