京都で行われたセミナーには
400人近い来場者が
2010年11月23日、京都で行われた「医療・介護従事者、介護家族のための認知症セミナーin京都」(主催:株式会社日本医療企画/共催:認知症を学ぶ会・株式会社グロービア)は、400人近くの来場者を集める大盛況。認知症についての情報を求める人の多さを、改めて感じさせられました。セミナーの前半で行われた名古屋フォレストクリニックの河野和彦院長による講演「認知症の見分け方と最新治療」では、1年で1,000人を超える認知症の新患を診察するという膨大な経験に裏打ちされたノウハウを公開。さまざまな認知症をどう見分けるのか、認知症の種類ごとにどのような治療法が適切なのかなど、かなり専門性の高い内容でしたが、「認知症で苦しむ人を減らしたい」という河野先生の熱気を帯びた話に、来場者も真剣に耳を傾けていました。
具体的なノウハウに感嘆させられたのはもちろんですが、私が特に心を動かされたのは、河野先生が独自の治療法「コウノメソッド」を研究・進化させる際に心がけているという3つのポイントについてでした。そのポイントとは、次の通りです。
- 薬の副作用を出さないために、医師の指示のもとで介護者が薬を加減する「家庭天秤法」。患者と一緒に暮らしている家族が、患者の細かい変化に一番気づけるはず。
- 患者と介護者のうち、一方しか救えない場合は介護者を救う。記憶を良くすることより、穏やかにさせる薬を優先。
- 安全で高い改善率の処方術を、広く公開する。
現在、コウノメソッドの実践医は全国で約40名とのことです。
「さまざまな認知症のなかでも、レビ-小体型認知症は診断が難しいとされるが、私はレビーの患者さんを診察・治療するのが楽しい。なぜなら、適切な治療法を行いさえすれば、劇的に症状が改善するから」と語る河野先生のノウハウやメッセージは、クリニックのサイトやブログなどで無償公開中。興味のある方は、ご覧ください。
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>自宅でかんたん 認知症診断ブック
>認知症治療28の満足―後悔しないためのベストの選択
パネルディスカッションでは、
認知症について熱を帯びた議論が
セミナーの後半では、「悩まない! 諦めない! 皆で支える認知症家族の生活術」と題したパネルディスカッションを実施。ガイドである私もパネラーとして参加し、両親についてのエピソードや、地域包括支援センターの活用方法、介護情報の集め方などについてお話しさせていただきました。
医療法人清水会の理事長で、脳神経外科医として多くの患者の診断・治療にあたる傍ら、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなど多くの介護サービスを運営されている清水鴻一郎先生は「正常圧水頭症という、虫垂炎程度の簡単な手術で治る認知症もある。諦めずに専門医の診断を受けてほしい」「認知症は恥ずかしいことでもなんでもない。介護は家族だけでなく社会で支えることが大事」「認知症予防のためには生活習慣を改善することが有効。そのなかでもストレスを溜めないようにするのが一番」など、認知症家族に向けたお話をされていました。また、財団法人仁風会嵯峨野病院の在宅事業部長で、ケアマネジャー、看護師として豊富な経験をお持ちの川添チエミさんは「要介護認定の際は、家族が立ち会い、普段の生活のなかで困っていることを伝えるのが大切」「ケアマネジャーの立場からかかりつけ医に『認知症の疑いがあるのでは?』と相談しても、『年相応だから仕方がない』などと取り合ってもらえないこともある。多くの医師が、もっと真剣に認知症に取り組んでほしい」「認知症患者が問題行動を起こす場合、必ず何らかの思いがあって行動している。その思いを理解して、周囲の人がチームとして付き合っていく必要がある」など、実際のエピソードを交えながら介護現場からの率直な思いを語っておられました。
特別パネラーとして参加された河野先生も「認知症をたくさん診ている人が、本当の意味での認知症専門医。患者同士のクチコミ、ケアマネのクチコミ、地域包括支援センターからの情報など、できるだけ生の声を集めて、自分に合った医師に出会ってほしい」「慢性的なストレスを抱えると、認知症のリスクが高くなる。ストレスに強い、明るい性格でないと、日々の介護も大変なので、意識的に笑う習慣を身につけてほしい」「認知症患者と家族の方に、笑顔になってほしい」と、熱いメッセージを語っておられました。
2011年2月11日に東京(津田ホール)、2011年4月29日には大阪(大阪市立こども文化センター)で同様の無料セミナーが開催される予定です。大阪セミナーには、また私も参加させていただく予定。興味のある方は、今からスケジュールを空けておいてください。
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