介護/介護の基礎知識・原因となる病気・怪我

【取材レポート】認知症を学ぶ会で家族と医師が連携(2ページ目)

「親が認知症かもしれない。でも、かかりつけの医師は「年相応の状態」などと言って、取り合ってくれない……。こんなとき、家族としては不安が募り、誰かに相談したくなったりするものです。今回は、認知症の患者、家族、医療関係者などが共に情報を共有し合うことを目的に活動を続けている認知症を学ぶ会と、2011年11月23日、京都で行われたセミナーの模様などをまとめてご紹介します。

横井 孝治

執筆者:横井 孝治

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家族と医師が、認知症の最新情報を共有する
「認知症を学ぶ会」

家族と医師が積極的な議論を続けている認知症を学ぶ会

家族と医師が積極的な議論を続けている認知症を学ぶ会

そんななかで、最近は認知症についての啓蒙や、理解促進、新たな予防方法や症状の改善方法の模索に取り組む動きも出てきています。

今回ご紹介する「認知症を学ぶ会」は、認知症に関わるすべての人が最新の情報を共有することを目的として、2008年に設立。ホームページ上で運営している掲示板は、医師だけではなく、家族や患者が直接意見を書き込み、それに対してみんなで意見交換を行うという独自のスタイルで運営しており、人気を集めています。

認知症を学ぶ会の主な活動は、次の3つです。
  • 情報発信……ホームページ上で、最新の認知症関連情報を発信する。
  • 情報の共有・交流……ホームページ上に設置した掲示板を通じて、患者・家族・医師などが認知症についての事例や対処方法などについて意見を交わし合う。
  • セミナー/イベント……専門医や介護関係者、認知症家族などを招いてのセミナーや勉強会などを開催する。
     

認知症を学ぶ会がめざすもの

「医師と家族、患者とのコミュニケーションは、本来なら行われて当たり前のこと」と語る、代表世話人の伊丹先生

「医師と家族、患者とのコミュニケーションは、本来なら行われて当たり前のこと」と語る、代表世話人の伊丹先生

医師と家族を繋ぐパイプ役として期待の高まる認知症を学ぶ会は、これまでの活動の成果と、今後の展開について何を考えているのでしょうか? 代表世話人を務める汐入メンタルクリニック理事長、伊丹昭先生にお話を伺いました。

横井「認知症治療についての現状は?」
伊丹先生(以下、伊丹)「物忘れなどの中核症状を改善することはまだできていません。現実の治療の問題としては、困った行動のコントロールですが、これがまだ模索中ですね」
横井「医師と家族、患者とのコミュニケーションの促進をはかっている狙いは?」
伊丹「これは本来、医療では当たり前に行われなければいけないこと。しかし、この当たり前のことができていないんです。時間が足りないこともありますが、どのように工夫していくかの問題。認知症を学ぶ会の掲示板は、そのような当たり前のことが行われている場所でもあります」
横井「これまでの活動のなかで感じることは?」
伊丹「掲示板には藁にもすがりたいという気持ちで相談の書き込みをしてこられる方が多いんですが、そんな方々にどこまで満足してもらえているのか、ということですね」
横井「今後、どういった活動を考えておられますか?」
伊丹「掲示板における相談者や家族の方などとのやりとりは非常に有意義なものが多いので、それらをもっと見やすくしていきたいです」
横井「今、認知症で悩んでいる介護者にメッセージをお願いします」
伊丹「生活の大部分を介護に頑張っている方々も多いと思いますが、疲れすぎないようにしてください。要介護者につらく当たってしまうようなことが増えたときは、介護者自身に疲労がたまったときです」

厚生労働省の統計によると、要介護の原因となる病気のなかで、認知症は第2位。誰にでもかかる可能性があります。医師が家族による生の声を聞いたり、家族が認知症についてのセカンドオピニオンを得る手段として、認知症を学ぶ会のような団体の必要性は、これからますます高まってくるのではないでしょうか。

次のページでは京都で行われたセミナーの様子をご紹介します。
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