「夫の親の介護は、嫁の役割」が変わる時
選択的夫婦別姓の反対論者は、「女性は仕事上でも、旧姓を通称とすることが浸透しているので、別姓選択の余地を残す必要はない」と主張することがあります。しかし、その不利益は、結婚後も仕事を続けたい女性だけではないのです。女性は、結婚して、当然のように夫の姓になった場合、自分の両親2人と、夫の両親と、夫(平均寿命は女性より男性の方が短いため)と、全部で5人の要介護者を抱える可能性があるのです。これでは、子どもの手が離れて、ようやく女性が外に働きに出られるようになっても、それが長くは許されない環境が再び来るかもしれません。現に、介護を理由に仕事を辞めるのは、9割が女性なのです。(厚生労働省「雇用動向調査」)
もし夫婦別姓が進み、夫の姓に変えない女性が増えたら、夫の「家」に嫁ぐという観念も薄まり、「夫の両親の介護も、妻が行うのが当たり前」という「常識」に、疑問や反発を感じる人が増えるでしょう。
そして、夫も妻も自分の親の老後をサポートしながらも、原則的には、家族や子どもに頼らずとも安心して老後が暮らせるような、公的な介護サービスが充実した社会に変えていかなければならないのです。