耳・鼻・喉の病気/中耳炎・外耳炎

中耳炎の種類・症状・予防法・治療法(2ページ目)

中耳炎は小児の時期には上気道炎から起きやすい病気。同じ中耳炎でも急性中耳炎、滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎で、症状が異なります。耳の構造を解説した上で、それぞれの症状、治療法を解説します。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド


中耳炎の主な症状

鼓室に起きる病気を中耳炎と呼んでいます。「中耳炎」という病名がついても病態は異なるので、「中耳炎の症状」として一括りにするのは、非常に誤解を与える表現なのですが、よくある症状としては以下のものが挙げられます。

■耳が痛い
炎症としての中耳炎の症状は耳が痛いという事になります。

■ 音の聞こえが悪くなる
鼓室内で炎症が起きると音の増幅機能に障害が起きるため、音の聞こえが悪くなることが多いです。

■ めまいが起きる
炎症が強いと内耳のもう一つの機能である平衡感覚にも影響が出てくるため、目眩が起きる可能性もあります。

■ 頭痛
中耳炎は痛覚を伝える神経が共通しているため、頭痛の原因ともなります。

小児の場合、言葉で中耳炎の症状を説明できないことも。乳幼児の場合、急性中耳炎は機嫌の悪さが主な症状になることもあります。急性中耳炎の耳に関する自覚症状を説明できる場合、耳が痛いと訴える子供が多いです。テレビの音量調節ができる年齢で、不必要に音を大きくしたがる場合は、難聴の可能性もあります。炎症で鼓膜に穴があいた場合、鼓室に溜まっていた液体がこぼれて耳だれが見られることもあります。

中耳炎の種類・症状

中耳炎にはいくつかの種類があります。「中耳炎」という病名ですが、耳管の機能障害が関係しており、主に以下の3つに分けられます。

■急性中耳炎
物理的に鼓膜に穴が空いてしまう外傷性の中耳炎を別として考えると、 通常は何らかの細菌感染によって起きます。耳管からの炎症が鼓室に及んだ状態で、鼓室の上皮に炎症が起きた状態です。急性中耳炎が長引くと慢性中耳炎と呼びます。

■滲出性中耳炎 (しんしゅつせいちゅうじえん)
「滲出(=滲み出す・しみだす)」という言葉の通り、鼓室の中に水が溜まった状態の中耳炎。何らかの原因により、耳管からの空気の通りが悪くなることで起こります。残っている鼓室の空気は、鼓室の上皮に吸収されてしまいます。

耳管から新しい空気が入ってこないので、鼓室の圧力が外気圧より下がってしまい、鼓室は陰圧状態になります。このため鼓膜が鼓室側に凹んでしまうので、耳の聞こえが悪いといった自覚症状が出ます。鼓膜が鼓室側に凹んだ状態は、真珠腫性中耳炎の誘因になるという考えもあります。

■真珠腫性中耳炎 (しんじゅしゅせいちゅうじえん)
鼓膜に真珠のような病変が見えます

鼓膜に真珠のような病変が見える、真珠腫性中耳炎

中耳炎が長引き繰り返す、慢性中耳炎の状態から起きます。鼓膜の外耳側の上皮が、鼓室側に入ってしまって起きると考えられています。

「腫」とついていますが腫瘍ではありません。耳垢が鼓室側に溜まる状態になると、局所で処理をするための生態反応が起きます。反応が起きている鼓膜を見ると、真珠のような塊に見えることから、「真珠腫」と呼ばれています。残念ながら、自然治癒することはまずありません。鼓膜から始まった真珠腫の組織は鼓室の破壊を続け、最終的には内耳や鼓室の周りの頭蓋骨まで破壊することがあります。

それぞれの中耳炎の治療法

急性中耳炎は、通常は細菌感染によって起きるので、抗生物質を使って治療します。鼓膜は再生能力があります。そのため、中耳炎で鼓室に膿や液体(漿液)が溜まってしまった場合、鼓膜を切開したり、切開した上で細いチューブを使って液体を吸いとったりする治療も可能です。抗生物質の効かない耐性菌が原因の場合は、少しやっかいです。耐性菌は慢性中耳炎の原因となります。中耳炎の部位では複数の菌が発育していますが、鼓膜を切開して外耳道から鼓室に空気を入れられれば、酸素の嫌いな菌の発育を抑えるきっかけとなります。

滲出性中耳炎は、中に溜まった液の排出のために鼓膜切開も行われますが、耳管の機能が回復しないと治りません。自然治癒することが多いので、経過観察になる可能性が高いです。ただし時間的には数ヶ月から年単位の時間がかかります。どの中耳炎でもすぐに治るという思い込みがある方の場合、時間がかかるのはおかしいのでないかと、自然治癒を待てず担当医と揉めてしまうこともあるようです。

真珠腫性中耳炎では、鼓室側に入りこんだ鼓膜の外耳側の上皮成分を外科的に取り除きます。取り残しがあると再発する可能性があります。鼓室の中が破壊されるので耳小骨の機能を回復させる手術も必要です。手術によっても聴力が回復しない場合があります。

中耳炎とワクチン

免疫記憶が低い子どもの場合、気道感染を繰り返して起こしやすいです。解剖学的(体のつくり)な弱点があり、常在菌が原因になりやすいので、急性中耳炎は誰でも経験する病気ということになります。滲出性中耳炎や真珠腫性中耳炎も、急性中耳炎がきっかけで起きるので、注意が必要です。

ワクチンに対しての安全性を追求し過ぎるために、「ワクチン後進国」と揶揄されることがある日本ですが、肺炎球菌ワクチンが認可されています。髄膜炎の予防ワクチンは中耳炎を予防する可能性も高いとされています。現在のワクチンは6種類の肺炎球菌が対象ですが将来的に13種類を対象としたワクチンが導入される可能性もあります。

最後のページでは、小児・シニアの中耳炎の注意点をまとめます。
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