年金の保険料、納付しないその理由は?
公的年金に不安を感じる人もいますが…
1.第1号被保険者の就業状況
平成20年の国民年金被保険者実態調査の中で、第1号被保険者の就業状況は以下のように推移しています。
(厚生労働省「平成21年度における国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について」より)
平成11年の調査では非正規雇用である「臨時・パート」の割合が16.6%でしたが、平成20年の調査では26.1%と10%近く増えています。就業別の保険料完納者の割合が最も低いのが「臨時・パート」であることからも、不安定な雇用である非正規雇用の労働者が増加していることが保険料納付率の低下に影響しているといえるでしょう。
2.所得水準の変化
国民年金の第1号被保険者の世帯所得を保険料の納付状況で比較すると、納付している世帯は555万円なのに対し、滞納している世帯は342万円となっており、200万円以上差があります(厚生労働省「平成20年国民年金被保険者実態調査」より)。また、被保険者本人の所得で比較してみると、納付者は178万円で、滞納者は113万円となっていて、所得水準の違いがみられます(同調査より)。保険料を納付しない理由として最も多く挙げられているのが、「保険料が高く、経済的に払うことが困難」というものです。
保険料の納付率が低下する原因として、第1号被保険者の世帯及び本人の所得水準の低さがあると考えられるでしょう。
3.年金制度及び行政組織に対する不信感・不安感
平成19年のいわゆる「宙に浮いた加入記録問題」以降、年金制度や旧社会保険庁に不満の声が上がりました。問題発覚以降、ねんきん定期便やねんきん特別便の発送、第三者委員会の設立、そして日本年金機構の設立など、信頼回復のための改革が進んでいますが、保険料を納付しない理由は以下のようになっています。
(厚生労働省「平成21年度における国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について」より)
「国民年金の保険料は滞納しているけれど、民間の個人年金や生命保険に加入している」人の割合は滞納している人全体の48.5%で、滞納者の約半分が民間の保険に加入していることになります(厚生労働省「平成20年国民年金被保険者実態調査」より)。この結果からも公的年金への不安から保険料を納付しないため、納付率の低下に影響していることがわかります。
以上のような原因で、保険料納付率が低下していると厚生労働省では分析しています。