ナンタケット島で作られる伝統のバスケットとは?
アメリカ東海岸。ボストンの南ケープコッドから、30マイルの沖に浮かぶ小さな島、ナンタケット島。セレブの避暑地として世界には名高いが、 日本ではまだあまり知られていない。 セレブといってもビバリーヒルズのように豪華なお屋敷が立ち並んでいるわけではなく、 風光明媚な島の自然は手つかずのまま、素朴で静かな暮らしが 営まれているのだそうだ。 秋にはクランベリーの収穫で、畑は真っ赤に彩られる。 絵画のように牧歌的な風景がいつもそばにある島。ここで伝統工芸として作られているバスケットがある。 エリザベス女王に献上されたこともあり、ホワイトハウスのクリスマスツリーに 飾られたこともある、由緒正しき芸術品。 もともと鯨漁で栄えた島であり、鯨から採れる油を入れる樽を作る技術が、 そのままバスケット作りに引き継がれた。 頑なな職人によって緻密な手作業で作られ、その製法はあまり外部に 洩れることなく、限られた者だけによって伝えられ、代々守られている。
完全オーダーで作られるナンタケットバスケットの魅力
入れ子式が楽しい手作りバスケット
ナンタケット島へ行くと、昔ながらの古いバスケットを、 日常的に使い込んでいるご老人を見かけることもしばしば。 彼らは無造作に野菜を保存したり、気軽な買い物に利用したりしている。 飴色になったバスケットは、壊れてもまた丁寧に繕い、一生使うものとして大事にされる。
ナンタケット・バスケット教室は日本にも!
2004年の秋から、そのナンタケット・バスケットの教室を始めたという、井上夕香さんを訪ねた。 彼女は夫の留学に伴って、ボストン在住時にこのバスケットに出会った。 ナンタケット島にも何度も訪れ、バスケットの魅力にますますはまってしまったのだそう。 日本人として初めてナンタケット・バスケットの技術を習得したという、八代江津子氏に師事し、 インストラクターの資格を取得した。 八代先生はNew England Nantucket Basket Associationという、ボストンに本部を置くナンタケット・バスケット制作指導を行う教育機関の運営者である。大変ガッツある女性で、なかなか口を割らない頑固な職人の元に通いつめ、 ついにその技法を学ぶことが出来たのだという。 しかし、まだ全てを明かされたわけではなく、 習うというより、職人の手業を見て盗む、というくらいの昔気質が未だ続いているようだ。左:モールドで形を固定して、藤を編みこんでいく
右:取っ手や底板はチェリー、オークなど全て天然素材
最後にニスを塗って取っ手を付け、象牙のアクセサリーをポイントにする。 この象牙はフォッシルアイボリーといって、何千年も昔の化石化したものであるため、 ワシントン条約からは外れる。もともと漁師から生まれた技術であるせいか、 鯨や貝殻など、海に関するモチーフが多い。 このアクセサリーを彫る専門の職人も島に存在する。
バスケットは、お出かけに持つバックとして使うことはもちろん、 何気なく部屋に飾っておくだけで、空間全体の雰囲気を作り上げる。 井上さんの家では小物入れとして活用していたり、平たく編んで、 お盆のようにも使う。しっかり編まれているから多少乱暴に扱っても大丈夫だし、 古くなるほど飴色のツヤが出て、いっそう味わい深いものになる。 井上さんの教室では初心者でもバスケットを作れるよう、簡単なものから指導している。とはいってもやはり時間のかかる作業で、すぐにできあがりというわけには行かない。訪れる生徒さんは、ひとつひとつの工程をゆっくりと噛み締めながら、手間暇を楽しんでいるよう。小さな島の職人たちの心意気を少しでも感じながら。
【関連情報】
・井上夕香さんの所属する
New England Nantucket Basket Association
https://www.newenglandnantucketbasketassociation.com/
・お問い合わせ
メール : jpn-office@nantucketbasketonline.com
(ボストン・中央区・荻窪・浜田山・世田谷・栃木・大阪に教室有り。
詳細はお問い合わせを)
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