子供時代、方眼用紙に描いた理想の家が、今の仕事の原点
きりっと並ぶ道具の姿が清々しい。左下がちび扉。
アワヤさんは生まれも育ちも地元横浜。 子供の頃は平屋住まいで、2階建てに憧れていたそう。
「ある日、両親から方眼用紙をもらって、自分の理想の家を描くという遊びをしたんですが、 これがものすごく楽しかったんです。それ以来、ヒマさえあれば家を描いてました。 同時にプラモデルを組み立てることも好きで。 描くことと実際に作ること、両方を自分でやるのが楽しいと思っていました」。
建築学校を卒業した後は、デザイン会社へ就職。 商業デザインをメインに行っていたため、グラフィックだけではなく、 プロダクトのデザインから、それを陳列する為の什器のデザインなど、 幅広く関わることができたそうです。 その後エクステリアの会社へ転職し、今度は図面通りに組み立てる職人的な仕事を 経験しました。フェンスなどを主に制作していたため、溶接や鉄の仕組みを 学ぶこともできたそうです。 さらにアンティーク家具屋へ移り、家具の修復を行います。 当時は小さな会社だったので、販売から納品まで全部をこなし、 お店の運営に関わる様々なことを身に付けることができました。
「そこから独立して、今に至っています。 全く意図したことではなく、自分ではあまり計画的でもなかったのですが、結果として、今までの経験が かなり役に立っています。 現在の自分の仕事は『描いて作ること』ですが、結局 子供の頃の遊びが原点だったんだな、と今になって思いました」。
中国、アフリカ、南米など、自由に集まった大らかな道具たち。
さて、世界各国の古道具や民芸品、現代のプロダクトなど、 店内に並んでいるものは、 いずれも購入することができます(アワヤさんの作品ももちろん購入可能)。 独特のフォルムと色、質感を持った 道具たちが、アワヤさんの作品と共鳴するように、静かに佇んでいます。 直感的に美しいと感じるもの、そして道具としてきちんと役割を果たしてくれるもの 、というのがアワヤさんの道具選びの基準。 「自分自身が手放したくないと思えるもの、それから意匠的なものも好きですね。 理屈ではない、と言ったらおしまいですが、作家とか国や年代にはこだわらず、 自分がいいと思うものを扱っていきたいと思っています。 ちなみに今の店内のテーマは『発掘とアルミ』(笑)。でも今後は現代のものも置いたり、 もっと実験的な試みも行いたいです」。
四角い陶版は陶芸家・伊藤環さんの作品。
アンティーク家具屋に勤めていた頃、木と向き合って毎日を過し、 木の仕事の奥深さや魅力に気づいたというアワヤさん。 木は種類によって違い、そして育った環境によっても性質が変わり、 さらに使い込むことによってますます変化していくもの。 生きているものだからこその楽しさと難しさがある、と語ります。 だから作品を作るときも、自分の想像を越えたものが出来上がることがあり、 それが頭に描いてた以上に良かったりすると、ますます魅力に取り付かれて やめられなくなるのだそうです。
「今回は店を始めるにあたって棚や扉を作ったり、空間を作り込むことの 楽しさを知りました。これを機会に内装の仕事もやってみたいですね。 デザインだけでも制作だけでもなく、やっぱり『描いて作る』という プロセスが好きです。 この場所は、今いい言葉が見つからないので 、まとめて『美術の店』ということにしていますが、 近所の人が梅干しを持ってきたりするような、町に根付いた気さくな雰囲気でいて、 さらに新しい何かが生まれるような場所になったら嬉しいと思っています」。
chikuni(チクニ)
神奈川県横浜市神奈川区西神奈川2-4-3 和知ビル101
東横線 東白楽下車 徒歩2,3分です。
tel 045-481-1441
10:00~16:30 18:00~20:00 木曜 他不定休
http://chiku-ni.com/
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