外観

蔦の生い茂る、味のある古いマンション。


吉祥寺の中道商店街をつらつらと歩いた外れのほうに、漆器と 暮らし道具を扱うお店ができました。 カフェや雑貨屋さん、ブティックなど、小さなお店が立ち並ぶ通りを、 あっちこっちと気の向くままに覗きつつ、ゆっくりと向かいましょう。 いつの間にか商店街が終わり、ぱあっと開けた緑の広場まで来たら あと少し。蔦の絡まる古いマンションが見えてきます。

「あばさけたい」。自由な漆

漆器
両手で包み込む、ころんとしたかたち。
入り口にはまっ黒な柱が立っています。これも実は漆で塗られたもの。 その奥の小さな扉を開けて店内へ。柔らかな光が差し込んで、ちょっと懐かしいような、 心落ち着く空間です。 壁にはぐるりと手作りの木の棚が設けられ、漆器や陶器、カゴなどが静かに並んでいます。

ここは、漆作家・山岸厚夫さんの店「KINJU(きんじゅ)」です。 福井で制作されています。 山岸さんの作品は、都内の器屋やインテリアショップなどでもときどき見かけますが、 これだけ一堂に集まっているところはなく、ぐるりと見渡すと圧巻です。 シンプルなお碗はもちろん、大皿、お盆、酒器やスプーンなども並んでいます。 赤、黒の漆器に混ざって、白い陶の器やガラス器、民芸のかごや布小物 もあります。どれも漆器とよく馴染み、お互いを引き立てています。

店内の様子
二部屋に区切られており、今後はギャラリーとして企画展なども開催予定。


この店に込めた山岸さんの想いは「あばさけたい」。 福井の方言で「あばれたい」というような意味なのですが、 漆が持つ従来の概念を打ち破って、もっと大らかに自由に表現していきたいのだとか。 洗いざらしのジーンズのように、毎日気軽に使ってざぶざぶ洗い、 だんだんと味わい深くなっていく、丈夫で使いやすい漆器、というのが山岸さんの目指すところでもあります。 今まで漆における新しい分野を開拓し、様々なことにチャレンジしてきた山岸さん。 大手インテリアショップの漆器をプロデュースしたり、 海外の見本市や展示会に出品したり。ニューヨークでは個展も開催しています。 日本はおろか、世界各地へも出向いているため、 いつもどこにいるのか分からないくらいに多忙な山岸さんですが、 この店を活動拠点、表現の発信地として、 「今の山岸厚夫」を伝えていきたい、とのことでした。


大らかで親しみやすい、暮らしの道具

店内
漆が加わることで、より印象深いシーンに。
山岸さんと一緒に、ディレクターとしてお店で扱うもののセレクトや 内装ディスプレイ、企画展などに携わっているのは、東京・二子玉川の器店・ KOHOROで店長も 務めていた恵藤文さん。 漆本来の美しさを引き立たせつつ、身近で親しみやすい雰囲気を 持てるような道具選びと内装を心がけました。 陶器は加賀の安斎新・安斎厚子さん、沖縄の金城有美子さんなど、 シンプルで使いやすい、白をベースとした器がメインです。 鍛鉄の成田理俊さん、ガラスの木下宝さん、木工の堀宏治さんの作品も並びます。 漆に添えることで、一層記憶に残るような風景を作り出す、魅力的な作品達です。



次ページでは、店内と作品をクローズアップ。