住みたい街 首都圏/キケンな街の見分け方

東海地震発生の可能性は80%以上? 地震に強い街に住みたい(2ページ目)

地震が頻発しています。関東周辺に大地震が起きるのは時間の問題などとも言われる今日この頃。これからの住まい選びには、防災面の視点は欠かせません。では、どんな街を選べばいいのでしょう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

建物倒壊危険度、火災危険度、避難危険度で街をチェック

地盤が固い場所でも、古い木造住宅が密集していれば、建物が倒壊、火災が発生する可能性はあります。また、細い路地の多い地域なら、逃げ遅れたり、消防車が入ってこられないことも。そこで、東京都では5年に一度、地域危険度測定調査を実施、発表しています。この調査の特徴は、建物倒壊危険度、火災危険度、避難危険度、災害時活動困難度の4方面から総合的な危険度を出し、さらに危険度特性を評価していることです。区市町村ごとに一覧表になっていて、非常に分かりやすいので、これから住む場所を探している人はぜひ一度目を通しておくことをおすすめします。

避難所地図
避難所の場所、経路は自治体の掲示板などに書かれている
もちろん、それに安心せず、災害時の一時避難場所、広域避難場所(名称、レベルは自治体によって異なることも)などの位置、そこまでの経路などを見ておくことも大事です。一時避難場所は近くの公立小中学校や児童館などが指定されている場合が多く、広域避難所はそれよりも遠くなりますが、大きな公園などになっています。どこに住むか、下見に行ったときなどに、地元の役所の出張所、あるいは掲示板を見れば分かるようになっていますから、チェックの上、時間があればそこまで歩いてみればベストです。

その際、注意したいのは、避難場所までの経路に橋が1ヶ所しかない場合や、がけ崩れの危険がありそうな場所や住宅密集で火災の危険の高そうな地域など、地震時に道が分断される可能性のある場所がないかどうか。道がなくなってしまったら、いくら避難所を知っていてもたどり着けないからです。

賃貸は自分で建物の強度を確認

震災時にアブナイ建物
1階が駐車場になっているなど、壁が少ない建物は避けたほうが無難
建物の強さも気になるところ。ただ、残念ながら、賃貸の場合には物件資料に、強度についての記載はない場合が大半。古い木造以外は倒壊の危険性は少ないといわれますが、それでも気になる場合は、

・ハウスメーカーの物件なら、そのメーカーのホームページで災害時の強さをチェック。

・古い物件なら築年数をチェック。1981年(昭和56年)に施行された新耐震基準に基づいて建てられていれば、とりあえず安心。

・建物の形や壁の量をチェック。1階に駐車場や空地が設けられていて壁が少なかったり 、変形な建物は避けたほうが無難。一番強度が高いのは長方形や正方形で、力がどの柱、壁にも均等にかかる構造です。

・見た目でチェック。壁にひびが入っている、非常階段が錆びて歪んでいるなどはもちろん、きちんとメンテナンスされていない建物は避けましょう。

分譲なら性能表示、係員の説明で確認

分譲で、住宅性能表示制度を利用している物件なら、それをチェックするのが早道。全体9項目のうち、構造の安定に関することが大事です。最初に出てくるのは耐震等級で等級は1~3まで。新築マンションなら等級1は当然。等級2も少なくないようです。また、ここでは地盤と基礎に関する項目もあり、どのような地盤調査をしたか、どんな地盤の上に建っているかなどが表記されています。素人には分かりにくい内容ですから、担当者などに解説してもらいましょう。ちなみに、ここでいい加減に答える担当者なら、それだけで×と思うほうがいいですよ。

耐震、制震、免震はどれがいい?

もうひとつ、最近、よく見かけるのは耐震、制震、免震といった構造を表わす言葉。簡単に説明すると、

・耐震→建物自体を強く作って地震に備える

・制震→建物内に揺れを軽減する装置を備える

・免震→揺れと建物を絶縁する

というもの。耐震はこれまでずっと行われてきた方法で、最近では制震、免震も増えてきています。特に免震は揺れを建物内に伝えないことから、室内の家具転倒などが少なく、最も被害を受けないという人もいます。ただし、普及につれてコストは下がってきたといわれているものの、耐震に比べると建築費は高くついているようです。

また、首都圏、阪神などの軟弱地盤では免震の効果を疑問視する声もあり、さらに最近、長周期地震動に関する研究が進むにつれ、新しい意見も出てきています。独立行政法人産業技術総合研究所の『首都圏における長周期地震動増幅の可能性』によると、首都圏では地下深部の基盤がでこぼこな状態になっており、地震波の伝わり方が場所によって大きく異なります。そのため、局所的に非常に周期の長い揺れが起きる場所ができる可能性があるのだとか。この周期の長い揺れの影響を受けやすいのはタワーマンションなどの高層建築物や石油タンク、大きな橋などです。

ただでさえ、長周期地震動の影響を受けやすいタワーマンションで、それがさらにゆっくり揺れる免震構造を取り入れているとすると、建物と地震の揺れが同調、免震装置が働かなくなるのではないか。一部には懸念する声もあるようです。

いずれにしても、構造は、地盤や規模などから最適と思われるものが選択されます。構造単体で優劣を比較するのは無駄なことなのです。しかも、制震、免震の強度は今のところ、実験値に過ぎません。自然の力が人間の計算をしばしば上回ってきたことを考えると、地震に強い場所の基本は、やはり地盤。地盤の弱さを、技術でカバーしようとすると、地盤改良や免震にするなど、余分なコストがかかります。しかし、地盤がしっかりしていれば、コストのかかる工法を取り入れる必要はなく、耐震で十分安全な建物が建てられるのです。

そのほか、タワーなど大規模なマンションでは非常用エレベーターや電源、ヘリコプターのホバリングスペースなど、他にはない設備の設置が義務付けられています。エレベーターも地震を察知したら、最寄階で止まるようなタイプが導入されているはず。室内でも揺れに扉が開かない耐震ラッチや非常時に懐中電灯になる足元照明など、あの手、この手の災害対策が施されていますから、モデルルームを訪問したら、地盤や構造に加え、どんな設備が用意されているか、展示されているパネルなどで確認、担当者に質問してみるといいでしょう。

【関連記事】
「地盤で異なる地震の揺れ方」(All About【住宅購入のノウハウ】)
「東京でいちばんあぶない町!」((All About【住宅購入のノウハウ】)
「エレベーターに閉じ込められたら」(All About【賢いマンション暮らし】)
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