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少子化で郊外お屋敷街の没落が始まる?!

いろいろな人が住み、様々な住居形態が混在、多様性のある街ほど活気があり、住みやすいもの。しかし、進行する少子化は街を高齢化、単一化します。あの、憧れのお屋敷街が没落していく可能性もあるのです。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

少子化、高齢化は街を変えます。これから10年、20年後に影響しそうな、現時点での変化を見ていきましょう。

少子高齢化の影響が大きいのは
同年代が多い、住宅だけしかない街=お屋敷街


殺風景な公営住宅
ニュータウンに限らず、30年代、40年代の公的住宅は車社会にも女性の社会進出も予想せずに建設。味気ない外観が並ぶ
少子高齢化で住みにくくなった街の例としてしばしば挙げられるのが、大阪の千里や首都圏の多摩といったニュータウン。 国土交通省住宅局「計画開発住宅市街地の現状と課題」によると、昭和30年代、40年代に入居が始まり、同じ年代が一斉に入居し、住宅に特化した土地利用が特徴で、比較的長距離の通勤を前提としていました。ところが、入居当時中心だった25歳~34歳の人たちも今や、60代以上。住戸や設備も老朽化、都心回帰の流れの中では長距離通勤は嫌がられ、若年世代の流入は減少、店舗なども含めた空き家が増え、治安にも影響が出ているといいます。

また、5月に発表された平成17年度版首都圏白書には、首都圏近郊の整備地帯の調査結果として、人口が減少している市区町村では一戸建てが多く、それ以外の地域では、マンション、一戸建て、賃貸マンションなど多様な住宅があることを指摘しています。

つまり、一戸建てが中心で、同時期に入居が始まった街では一斉に高齢化、少子化が始まり、かつ、土地の転用がままならないため、街が空洞化していく可能性があるということです。

お屋敷街
相続のたびに住宅が小さくなっていくこともよくある現象
その条件に当てはまる住宅街を考えてみると、思いつくのは郊外のお屋敷街。具体的に場所を挙げてみると、田園調布、成城学園、荻窪、武蔵野市の井の頭公園周辺、山手(横浜)などなど。郊外というほどではありませんが、一戸建て中心で、土地の利用規制が厳しい場所です。

これらの場所では他より高齢化が進んでいます。例えば、田園調布。平成12年の国勢調査によると、大田区の平均年齢は41.3歳ですが、田園調布の最も土地規制が厳しい3丁目では45.4歳、4丁目は44.3歳。ほんの少しお隣、環状8号線に面し、マンションも目立つ世田谷区玉川田園調布になると、41.6歳と下がります。

同様に成城学園も、世田谷区平均年齢が40.5歳のところ、成城4丁目では43.2歳、5丁目では44歳、6丁目は46.2歳です。

【大田区と田園調布周辺の平均年齢は?】
大田区全体田園調布3丁目田園調布4丁目玉川田園調布
41.3歳45.4歳44.3歳41.6歳
※平成12年度の国勢調査より


田園調布では空き地や
閉店も目に付くようになっていた


田園調布の街並み
2世帯住宅と思われる表札の並ぶ家も増えている
そこで、とりあえず田園調布を見に行きました。この街はご存知のように大正末期に財界の大物、渋沢栄一がヨーロッパの田園都市を理想として開発した住宅街で、今も、建物の新築、増改築などには田園調布会が厳しい規制を敷いています。いわく、住宅地区では建物の高さは9mまで、4戸以上の共同住宅の建築は不可、土地分割後の面積は165m2とすることなどなど。

田園調布の空き地
販売されている場所、更地になっているだけの場所、いずれも広い区画だ
こうした指針がこの街の景観、ステイタスを守ってきました。しかし、久しぶりに訪れてみると、住宅街の中には空き地も生まれていました。ひとつずつの区画が大きいこともあり、空き地沿いはちょっと物騒。シンボルの並木も見ようによっては、格好の隠れ場所とも。人通りがないこともあいまって、防犯面が気になりました。

実際に田園調布警察の統計を見ると、町域が広いこともあり、管轄内では田園調布での空き巣被害が最大。平成18年1月~4月に起きた24件のうち、実に10件は田園調布で起きています。

商店街の中の空き店舗
70年余に渡って営業していたクリーニング屋さん店頭に廃業の貼り紙が
この地域では、住宅以外にも規制があります。消費者金融やパチンコ店がないのはもちろん、駅前地区を除いてはコンビニやファーストフードなどはありません。飲食店も数えるほど。駅に隣接してスーパーはあるものの、後は小さな商店街。しかも、ここでも空き店舗が目立ちます。東口にある福徳商店街の会長さんは3年ほど前の毎日新聞のインタビューに、店を畳む2代目、3代目が増えたとコメントしています。シャッター商店街とまではいかないものの、活気が失われつつあることは確かです。

恵比寿
住宅と商業施設、娯楽施設などが一体になった都心の街に人気が集まる
今どきの人気エリアという意味では賃貸の動向も見ておきましょう。ある程度お金があり、好きに住む場所を選べる、でも、忙しい人たちがどこを選ぶか。参考にしたのは高額物件を扱っているケン・コーポレーションのTokyo Rentの人気エリア。東急東横線・田園都市線周辺では恵比寿・代官山、学芸大学・中目黒、駒沢・自由ヶ丘が挙げられていますが、田園調布は含まれていません。また、これ以外の人気エリアは赤坂・六本木、原宿・表参道、四谷・番町、麻布・広尾、白金・高輪、ベイエリア、松涛・上原となっており、都心寄りの、何でも揃う、活気のある街のほうが好まれることが分かります。

では、気になる生き残る街の条件を次ページで見ていきましょう。
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