東京を代表するお屋敷街のひとつ、成城学園。並木が印象的なこの街の魅力を歩いて訪ねてみましょう。
成城と周囲の位置関係は?
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成城は野川、仙川、2つの川の間の高台に作られている |
学校移転を機に計画的に作られた、
美しい街並みが何よりの魅力
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北口、成城学園側から駅、2006年9月に開業した駅ビルを望む |
小田急線急行で新宿から15分。駅を降りた途端から、桜の木々に迎えられるのが今も昔もお屋敷街として有名な成城学園前です。もともとは喜多見村と呼ばれたこの街が成城学園という名称になったのは、昭和46年。意外に新しいのですが、そもそも、その名の由来になったのは、今もこの街のシンボルである、小学校から大学まで一貫教育を行っている成城学園によるものです。
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学園都市らしく、街のあちこちで学生や、制服姿の児童を連れた親子の姿を見かける |
その成城学園は大正6年に日本の初等教育の実験的教育の場として作られた成城小学校から始まり、教育の一環を願う父母の要望から、中学、高校、大学と作られてきました。当初は新宿区牛込にあった同校が現在の地に移転したのは、大正14年。昭和2年には小田急線の成城学園前の駅ができ、同時に駅周辺の土地を学校が購入、父兄に分譲を始めたのが、この土地が住宅街として発展していく契機となりました。
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通りによって樹種は異なるものの、いずれの並木も街の財産として大切にされている |
この住宅開発に当たっては武蔵野の面影を残す街づくりがテーマとして掲げられ、具体的には生垣は低くして、花木を多く植えることが申し合わされたとか。その結果が今も成城のシンボルとなっている並木や住宅街の緑陰というわけです。
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現在、東宝スタジオの脇には住宅展示場やホームセンターが立地、その間を流れる仙川沿いは夜桜の名所 |
街づくりにあたって、民俗学者の柳田國男が参画したこともあり、それ以降、多くの作家や文化人、芸能人が住んできました。この街を愛した作家大岡昌平にはその名も「成城だより」なる著作がありますし、水上勉や大江健三郎などもこの街の住民。さらに昭和初期に東宝撮影所(現在の東宝スタジオ)が作られたことから、黒澤明監督や山本薩夫監督などの映画関係者、芸能人の自宅も多いのだとか。ちなみに、ゴジラが誕生したのは、この東宝スタジオです。
地名を冠したスーパーにしゃれたレストラン、
駅ビル完成でより住みやすく
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成城の名を冠した商品はいくつかあるものの、一番知られているのはこちらのスーパーだろう |
さて、その成城学園前の駅前で目立つのは最近、各地の駅ビルなどでもみかける「成城石井」。地元でのお買い物の定番スポットで、この街らしく、チーズやワインの品揃えが充実しています。それ以外の商店街ではしゃれたレストランやギャラリーやブティックに混じって庶民的な魚屋さんなども。これはかつて牛込にあった商店が学校移転とともに移ってきたからだそうです。
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内部に大きな吹き抜けを設けた、開放的な駅ビル成城コルティ店内 |
また、この街のニュースは2006年秋に完成した駅ビル
「成城コルティ」。スーパーやドラッグストア、インテリアショップにクリニックモールなど、多彩なテナントが入っており、中でも注目は3階にある「子育てステーション成城」。これは東京都認証保育園「小田急ムック保育園」、一時保育施設「ムックフレンズ」(2007年4月からは区からの委託事業として「ほっとステイ」に名称変更予定)、世田谷区の子育て相談・情報提供スポット「おでかけひろば」からなるもので、行政と民間企業が提携して子育て支援多機能施設を設置する初めての試み。これを機に、子育てファミリーにとっての住みやすさがアップしていくことを期待したいものです。
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庭木の手入れをする植木職人さんの姿が目に付くのはこの街ならでは |
子どものいる世帯には教育事情も関心事ですが、この街では少し上を向いて歩くと、進学塾や予備校などの看板があちらこちらに。教育熱心も土地柄というわけです。同様に、多く見かけるのは、警備会社のステッカーに、専門の植木屋さんが手入れしていると思われる庭木。逆に見かけないのは、消費者金融にパチンコやスロット店など。こちらも土地柄なんでしょうね。
ひとつ、注意しておきたいのは、駅前以外は住居専用の地域になっていることが多く、コンビニやファミレスはもちろん、自動販売機すらないエリアも少なくないこと。夜間の帰宅時には静か過ぎて、ちょっと不安を感じる場所もあります。
では、気になる住宅事情がどうなっているか、次ページで見ていきましょう。