子供の病気/風疹

風疹の症状・治療・予防・合併症

【小児科医が解説】風疹は子どもに多い病気で、最近はMR(麻疹・風疹)ワクチンによって減りつつありますが、妊娠中にかかると胎児奇形の危険性が高まるため注意が必要です。風疹自体は麻疹と似ていて重症化しませんが、合併症の心配もあります。風疹の症状・治療法・予防法についてまとめました。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

風疹は「はしか」に似ていますので、「3日はしか」と呼ばれることもあります。しかし、はしかと風疹はまったく別の病気です。
 

風疹の症状……発疹・発熱・リンパ節の腫れなど

風疹の合併症・症状・治療・予防

風疹の発疹は淡い赤い発疹。発熱がないケースも多いです

発熱と赤い細かな発疹という全身症状が特徴。主な症状は以下の通りです。
 
  • 発疹
    赤い細かい発疹でほぼ同じ大きさ。全身に出て、3~5日で消える
  • 発熱
    発疹と同時期。しかし半数ぐらいには見られない
  • リンパ節が腫れる
    特に首と後頭部のリンパ節が腫れる
  • 眼球結膜充血
 

風疹の原因・潜伏期間

風疹は風疹ウイルスによって起こる全身の病気。風疹ウイルスは、「トガ科ルビウイルス群RNAウイルス」に分類されます。風疹ウイルスはヒトからヒトへしかうつしません。そのため、風疹になったときには、周りに風疹の人がいたことになります。唾液や痰などが咳・くしゃみで飛び散ることによる飛沫感染です。

感染してから発症するまでの潜伏期間は 14~21日です。
 

風疹の合併症……先天性風疹症候群・脳炎による死亡例も

もっとも問題になるのは、子供ではなく、妊婦への感染です。

■先天性風疹症候群
妊娠8~12週に母体が風疹に感染すると、約20%の頻度で胎児にも感染し、生まれてきた子どもには、白内障、網膜症、難聴、心臓の奇形、発達の遅れ、小頭症が見られます。白内障は失明の原因になります。残念ながら治療方法はありません。

■関節炎
女性の成人で多く、5~20%に起きます。

■脳炎
風疹にかかった4000~6000人に1人に起こる合併症。風疹の発疹が出てから2~7日で発症し、後遺症もなく治ることがほとんどですが、死亡例も報告されています。

■血小板減少性紫斑病
風疹にかかった3000人に1人に起こる合併症。風疹の発疹が出てから2~14日で発症し、血小板が少なくなり、血が止まりにくくなります。子供の場合は急性の症状のみで、一旦治ると問題ないことが多いですが、まれに慢性的に血小板が少なくなってしまうことがあります。

■溶血性貧血
頻度は非常にまれ。風疹の発疹が出てから3~7日で発症し、赤血球が壊れてしまい、赤血球に含まれるビリルビンが増える病気。ビリルビンが増えることで、貧血による顔色の変化、身体が黄色くなる黄疸、胆石による腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがあります。
 

風疹の診断・抗体検査

風疹の診断で最も確実なのは、鼻やノドなどからウイルスを見つけることです。ウイルスそのものを検出する場合と遺伝子を検出する方法があります。風疹の診断を確実にするために、保健所で遺伝子を検出する方法が行われています。

血液検査で風疹に対する反応が起きていることを示す抗体がないか、測定します。ウイルス感染後に上昇する「IgM」という抗体を検査したり、病気になっている時と1~2週間後の回復した時に測定して抗体の上昇を見ることで、風疹かどうか診断します。大人でもかかる病気なので、症状が治まったあとでも、風疹の抗体ができたかどうかを知る意味でも検査には意味があります。

特に、妊娠中は、風疹の抗体を持っているかどうかを産婦人科で検査する事が多いです。十分な抗体があれば、感染の心配はありません。

風疹の抗体はHI法(倍々で数字が上がっていきます)で測定されることが多く、8倍未満は免疫が持っていないと考えられていますし、8倍、16倍は免疫が低いので、ワクチンが推奨されています。32倍以上であれば、十分な免疫があるとされています。
 

風疹の治療法・予防法……かかる前のワクチン接種が重要

風疹ウイルスに対する特効薬はありませんが、風疹自体は症状も強くなく、自然治癒します。そのため、発熱時に必要なら対症療法として解熱剤を使うのみです。

しかし合併症にはリスクがあるので、かかる前の予防が大切。特に先天性風疹症候群を防ぐためには、予防法として確実な予防接種を行うしかありません。
 
製品写真

麻疹との混合ワクチン、MRワクチンが使われます

現在は、麻疹と混合のMR2種混合ワクチンというものを接種します。

ワクチンの効果は1回では不十分なので、現在は、2回接種します。子供の場合は、生後12ヶ月~24ヶ月で1回、5~7歳で1回です。

以前は1回しかしていないため、1回しか受けていない子供については、平成18年から5年間に限って、中学1年生と高校3年生にも接種する事になってしまいましたが、現在はこの事業は終了しています。これは以前、麻疹が大学生で大流行をしたために緊急的に行われています。ある程度の年齢ですと、免疫がありますので、この年齢に限ってワクチンをしていました。

しかし、風疹の流行がなかなかおさまらないので、追加対策として、厚生労働省では、2022年3月31日までの間に限り、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性(対象世代の男性)が風しんに係る定期の予防接種の対象者として追加され、抗体検査を受けて、抗体が低い場合は定期接種として、無料で接種できます。住んでいる自治体からクーポンが送られてくることになっています。

該当する年齢の私も風疹になった記憶もワクチンも接種していないのですが、今年になって、検査しました。当然ながら抗体は高い状態(256倍)でした。    

ワクチンの副作用は非常に少ないですが、接種後5~14日頃に発熱や発疹がおきることもあります。
 

風疹の出席停止・登校基準……いつから登校できる?

学校保健法では、発疹が消えるまでは出席停止です。

風疹にかかると、保健所にすべて報告しないといけません。

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