「コレステロールと寿命」…相反する2つの研究結果

健康診断で「高コレステロール」と指摘されたら……

健康診断で高コレステロールと言われたら……

「高コレステロールは心筋梗塞などの危険因子なので下げるべき」という健康管理の考えは、現在の日本の医療では定説となりました。これに対し、医師や栄養学者が参加する日本脂質栄養学会が「コレステロールが高いほど死亡率が低い」という研究結果を発表し、話題になっています。(参考:「長寿のためのコレステロールガイドライン」(PDF))。

コレステロールはこれまでのアドバイス通り、下げた方がよいのでしょうか? それとも今回の発表のように、高いままの方が長生きできるのでしょうか? 研究結果の読み方と併せて解説します。

そもそもコレステロールとは? その他の危険因子との関係

2つの研究結果をとっても意見が真っ向から分かれるコレステロール。簡単に結論を出すことはできないようですが、ここでは中立的な医師の立場から見解を述べたいと思います。

まず、「高コレステロールによって血管が詰まりやすくなる」ということは、現在わかっている事実の一つです。ただ、突然死の原因が全てコレステロールだけにあるわけではありません。高コレステロールにその他複数の危険因子が絡み合うことで、命に関わる心筋梗塞や、要介護となる脳梗塞などの重大な病気が起きやすくなるのです。

これらの疾患は、女性よりも男性に多く、また、年齢に比例してリスクが増えます。糖尿病、高血圧、高脂血症などの持病を持っている場合もハイリスク。生活習慣では喫煙が最大の危険因子です。

危険因子について補足すると、糖尿病は発症後はコントロールが難しく、リスクを下げることは簡単ではありません。高血圧は薬剤で下げることが可能なので、リスクを下げることができます。高脂血症に関しても、薬剤を用いて血中のコレステロールや中性脂肪を下げることができるので、病気のリスクも下げられます。

禁煙はさまざまな研究で害がはっきりしています。禁煙しない場合は、残りの危険因子を減らす努力をしても無駄になると言っても過言ではないでしょう。禁煙できない男性で、糖尿病や高血圧がある場合は、高脂血症により注意を払うべきという意見に反対する人はいないと思います。

「高コレステロール=早死に」と言い切れないわけ

薬剤を用いた研究は、通常5年程度かけて行われます。コレステロールと関連があると考えられている疾患は、そもそも若い年齢では発症率が低いので、研究自体が実施されていません。そのため、若い人にとって高コレステロールが危険なのかどうかは、実質わかってないのです。

男女差がありますが、35歳以下の男性の場合は、薬剤を用いてコレステロールを下げても寿命が伸びるかどうかは調査されていませんし、同様に、55歳以下(更年期前)の女性を対象とした研究も実質的にないので、女性の血中のコレステロールを下げるべきと言い切ることができないのです。閉経後の女性を対象とした研究でも、明らかに下げた方がよいという結果は出ていません。

「コレステロールが高いと血管が詰まりやすくなる」という事実と、「血管が詰まることは命に関わる病気を招きうる」という事実の2つから、三段論法的に「高コレステロールは早死にになる」と考えられるのですが、それを研究結果として裏付けるものはない、というのが現状なのです。

次ページでは、実験によって違う結果が導き出されてしまう理由を解説します。