脳の発達に伴って眠りも進化した
どんな夢を見ているのでしょうか?
脊椎動物の睡眠は、発達した脳を効率よく休ませるために進化してきました。変温動物で脳が小さい魚類や両生類では、身体を休ませる必要はありますが、脳を休ませる必要はあまりありません。
身体と脳が大きくなった爬虫類になると、身体を休ませるレム睡眠と脳を休ませるノンレム睡眠が少しずつ現れてきました。鳥類や哺乳類になると、レム睡眠とノンレム睡眠がはっきり分かるようになります。そして、レム睡眠中は身体を休めるだけでなく、記憶の整理や定着、シュミレーションなど脳のメンテンスが行われるようになりました。
この点では、大脳が最も発達したヒトが、一番完成された睡眠サイクルを持っていると言えます。
ナマケモノは1日に20時間も眠る
象が短時間睡眠だったとは
最も長く眠る動物は、フタツユビナマケモノ(オオナマケモノ)とコアラで、1日に20時間も眠ります。ナマケモノは名前のとおりですね。動物園で見るコアラも、いつも眠たそうです。
身近な動物では猫やハムスターが14時間、犬(ビーグル犬)やハツカネズミは13時間眠ります。犬が猫と同じくらい眠るというのは意外です。実は犬も昼間によく眠っているのですが、わずかな物音でも目覚めるので眠っている姿をあまり見ないのでしょう。
ヒトに近いチンパンジーやヒヒ、アカゲザルは9時間眠ります。睡眠の進化から見ると、私たちもあまり睡眠時間を削らないほうが自然なのでしょう。ヒトと同じく8時間睡眠をとる動物には、ウサギやモルモット、ブタなどがいます。同じネズミの仲間でも、ハムスターやハツカネズミに比べて、モルモットは短時間睡眠ですね。
草食動物の多くは、睡眠時間が短いことが知られています。ウシやヤギ、ヒツジ、ロバ、ゾウは3時間、ウマは2時間しか眠りません。草食動物が短時間睡眠なのには、2つの理由があります。
ひとつは、草は低カロリーなのでたくさん食べる必要があり、草を噛み砕くためにも長い時間がかかるため、草食動物は眠っている時間がないのです。また、眠っている間は肉食動物に襲われやすくなるので、なるべく起きて警戒している必要があります。そのため睡眠時間を短くして、しかも深く眠らずウトウトしながら身を守っています。
睡眠の研究に貢献する動物たち
イルカは泳ぎながら眠ります
半球睡眠では、右脳を眠らせるときには左目を閉じ、左脳を眠らせるときには右目を閉じています。これで泳ぎながらでも眠ることができるのです。半球睡眠を研究して、眠らない兵士を作ろうとしている国もあるようです。
長距離を飛行する渡り鳥も、半球睡眠しながら目的地まで飛んで行きます。また、飛んでいる最中に数秒間だけ脳全体を眠らせ、地表に墜落する前に目覚めるという芸当をすることもあります。ヒトでも長時間眠らないでいると、「マイクロスリープ」という数秒程度の超短時間睡眠が見られます。この技法を身につければ、短時間睡眠も夢ではないかもしれません。
睡眠物質の存在を世界で初めて証明したのは、犬を使った実験でした。1909年に愛知県立医学専門学校(今の名古屋大学)の石森国臣教授が、長時間断眠させたイヌの脳脊髄液を別のイヌの脳内に投与すると、投与されたイヌが眠ることを発見しました。これをきっかけに睡眠物質の研究が進み、いまでは約30種類の睡眠物質が見つかっています。
猫は、動物も夢を見ることを教えてくれました。夢の多くはレム睡眠中に見ていますが、レム睡眠の中枢は脳の青斑核という部位にあります。この青斑核を壊された猫は、レム睡眠中にネズミをとる動作などをすることが分かりました。夢は目覚めているときの行動のシュミレーションではないか、という仮説の根拠にもなっています。
9月20日からは動物愛護週間です。目覚めているときだけでなく、動物の寝姿にも注目すると、新しい発見があるかもしれません。
【関連サイト】
睡眠・快眠の基礎知識
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