素晴らしい日本茶との出会いが、カフェ誕生のきっかけに
じつは飯田さんの「お茶をテーマにしたビジネス」の当初の計画は、カフェではなく、ワゴン車での販売のような気軽なものだったそう。しかし、向島園の感動的な物語を持つお茶と出会ったことで、構想が変化。この生命力に溢れたお茶を味わうのにふさわしい空間が必要だと考えはじめた。
「向島園は静岡県藤枝市で20代以上の長きにわたって、代々受け継がれてきた茶農園。現在の園主である向島和詞さんは、わずか18歳のときに父親から茶農園を引き継いだのです」
無農薬・無化学肥料のお茶づくりは、自然と対峙しながらお茶という生きものの声を聞く、とてつもなく手間のかかる仕事だ。
「彼は一本一本の苗木に充分なエネルギーを与えるため、植える間隔を通常の1.5倍から2倍も広くとり、こまやかな愛情を注いで育てているんですよ」
向島園こだわりの完全有機栽培煎茶「和み」と和菓子のセット(1100円)。渋みが少なく、甘みやコクを感じやすい深蒸し。一煎目を飲み終えると、スタッフが二煎目用のお湯をサーブしてくれます。お皿は原田譲さんの作品。 |
飯田さんは実際にそのお茶の旨みを味わい、向島和詞さんからお茶にかける想いを聞いて深い共感をおぼえ、「これは心地よい空間でゆったりと座って堪能すべきお茶」と確信したのだという。
そこで飯田さんは、ご自身が設立メンバーとして関わった表参道アカデミーで出会った信頼できるフードプロデューサーに、カフェのプロデュースを依頼。
食と心身の健康との関係に造形の深いそのプロデューサーとは、昨年の記事でご紹介したKIYOさんこと南清貴さんだった。
安心素材を用いた充実のランチ
有機野菜と雑穀ごはんを中心にした、心身に滋養を与える週替わりランチの提案は、「ナチュラルエイジング」を提唱してきた南清貴さんならお手のもの。回季が一番にぎわうのは、このおいしいランチ(950円)を目当てに界隈で働く人々が訪れるお昼どきなのだそう。