輸入車/注目の輸入車試乗レポート

アストン初の本格4ドアスポーツ、ラピード

アストンマーティンの量産モデルとしては初の4ドアモデルとなるラピード。ライバルとは異なる世界観をもつ美しい“4ドアスポーツクーペ”の走りは……。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

ドイツ勢と全く異なる世界観、これに乗れる家族が羨ましい

アストンマーティンラピード
2009年のフランクフルトショーで登場した、アストンマーティン初の4ドアモデル。サイズは全長5019×全幅1929×全高1360mm。価格は2268万円

アストンマーティンラピード
他モデル同様、乗降時の利便性と下部の損傷を防ぐため斜め上(12度)に開くスワンウイングドアが備わる
RAPIDEといえば、古いマニアはラゴンダを思い出すだろう。1960年代前半に造られた、アストンマーティンDB4ベースの4ドアモデル、ラゴンダラパイド。だったら今回もラゴンダって名前を使えば良かったのに、というのは全くもって個人の見解だけど、そうすると落合監督も乗っていた懐かしのAMラゴンダとの関係もややこしいし。。。

なんて独り言はさておき、ラピードはとても美しい4ドアサルーンである、というよりも4ドアクーペといった方が収まりはいい。ぱっと見にはDB9と同じように見えるし、横からみてもドア数が多いだけで、シルエットはクーペそのものだからだ。

ここ数年、マセラティクアトロポルテやポルシェパナメーラなど、スポーツカーブランドの4ドアモデルが注目を集めているが、ラピードはその中においてもひと際異彩を放つ存在だと思う。

最もコンサバなM・ベンツSクラスやBMW7シリーズ、アウディA8に比べると、ジャガーXJ、マセラティクアトロポルテ、ポルシェパナメーラの順にスポーツ度が色濃くなっていく。アストンマーティンラピードに至ってはサルーンと呼ぶことさえ憚れるような、ドイツ三羽烏とは対極にある“4ドアスポーツカー”と言っていい。

アストンマーティンラピード
一目でアストンマーティンと分かるデザインのテールランプには360個のLEDが用いられた

だから、大型サルーンを評価するように後席の乗り心地云々とか、トランクその他のユーティリティとか、別にどうでもいい話、かも知れないが、一応試してみれば、これが案外に良かった。ちなみに、ドアは4枚とも(!)例のスワンオープンタイプである。

リアシートはこんもりと包まれた感覚で、広くはない(というか狭い)けれども、なぜか居心地がいい。パナメーラもバケットシートでかごに収まる感がしたが、空間がタイトな分、こちらの方が“ハマった”感が強い。ちょっとした荷物なら後に置けるし、ブートスペースの使い勝手もまずまず。

こんなクルマで家族旅行できるタイミングは、(クルマや余裕や家族が)あったとしても相当に短い期間(子供が大きくなったらしんどい)だろうが、はかない夢ほど想像を掻き立てるもの。そういう風に使う人が、周りにはいないし、いるかどうか知らないけれども、羨ましくおもえてきた。

後に乗る幸せな子供たちのことは忘れ、前をしっかり向いて前進することにしよう。ドライバーズシートに座って前向きになれば、そこに広がる景色はDB9など現代のアストンマーティンそのもの。つんと鼻にくる独特な香りを楽しみつつ、クリスタルキーを押し込む。

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