16年間で100件近くの設計をしてきた実績と、多くの受賞歴を持つ納谷建築設計事務所。「室内にモノが出ててもいいんですよ」という、生活感のない作品とは結びつかない一言から始まった今回の取材では、クライアント(施主)としてやっておきたい収納プランの心得について、建築家・納谷兄弟に伺ってきました。

1.具体的な数字を伝えよう

納谷兄弟の温かく誠実な人柄が設計にも反映されている。
納谷兄弟が設計をスタートするにあたって、クライアントには持ち込みたい家具のリストを作ってもらうそうです。ソファやテーブルをはじめ、タンスの大きさや数などを調べて記入。それによって、どんな暮らしをしたいのか? クライアント自身が見直すきっかけになります。

私たちは住まいに対して、「たくさんしまえる収納」を求めがちですが、持ち物リストがあれば、「クローゼットの幅は最低でも5メートル必要です」と数字で伝えることができます。そして数字をはじく以上は、収納量に対して確かな根拠と考え方を持っているかどうか、改めて自身に問い直してみましょう。 そもそも服は何着あったらいいのか? そのジャッジができるのは、クライアント本人しかいません。

一方で、建築家のアドバイスを受け入れることも忘れずに。収納量が不足するのでは? という漠然とした不安があると、収納スペースを多めに要求しがちです。ところが出来上がってみたら予想以上に収納力があって、「何を入れよう?」と戸惑うクライアントも。収納が余るというケースは珍しいですが、建築家の見解を十分に聞いて、他の空間との配分を判断していきたいところです。

2.必需品と趣味の品と分けて伝えよう

所有品のなかには生活に必要な持ち物と、その人やその家族ならではの独特な持ち物とがあります。納谷兄弟が設計するときには、一般的な生活必需品はヴォリュームでとらえて、コレクションのような特殊な物については、その種類とこだわり度を重視するそうです。

使い勝手を優先するのか趣味性を大事にするのかによって、室内空間や収納空間のつくり方が変わります。建築家に自分や家族のこだわりを伝えるというのは、クライアントとして意識的に行っていきたいこと。その点でも持ち物リストは、具体性があって役に立つ資料です。

3.無駄をそぎ落とす作業をしよう

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「大きなダイニングテーブルを置きたいからリビングは要らない」というケースもあったとか。要る要らないの判断をするというのは、住まいに求める条件を整理するうえで大切な考え方です。

持ち物が増えやすい私たちのライフスタイルにとって、無駄を削るというのは難しく感じます。とは言え、暮らしの形を鮮明に浮かび上がらせていく設計プロセスにとって、それは欠かせない発想。納谷兄弟からクライアントに対して、余分な持ち物を「捨ててください」とは言いません。何故ならば、住まいを建てようと思ったときから、クライアントは新しい暮らしへの夢と覚悟を決めて臨むからだそうです。

そして、完成後に大きく変わるのはご主人の暮らしぶり! 掃除をする、部屋の使い方が丁寧になる、家族に汚させない、片づけるなど、住まいへの愛情の表れということなのでしょう。家に居る時間が楽しくて、出掛けたくなくなるようです。しかも1年後の点検で納谷兄弟が伺うと、当初のままきれいに暮らしてくれているから嬉しいとのことでした。

納谷兄弟は「住まいそのものが収納」と言います。収納のためだけのデザインをしない一方で、単純にさりげない形で全てが収納されているから、空間に生活を感じさせないのかもしれません。住まいとは何か? そこを見つめ続ける建築家ならではの収納プランの心得を、皆さんの住まいづくりに役立ててみては如何でしょう。

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